次の試合で
《サイド:深海優奈》
「試合終了!勝者、深海優奈!」
はふぅ。
なんとか無事に勝てました。
これでこの会場で3度目の勝利です。
彼方さんに続いて、
村越邦夫さんと、
遠藤早苗さんに勝ち続けたことで、
私の生徒番号は33番にまで上がりました。
「終わりました」
総魔さんの側へ戻ってみると。
「ああ、順調に勝ち進んでいるな」
総魔さんは優しく微笑んでくれました。
「はい。ここまではなんとか…」
特に怪我もなく勝ち続けているのですが。
それでもまだ肝心のルーンに関しては進展がありません。
一体、どうすればいいのでしょうか?
頭を悩ませてしまいますが総魔さんは気にしていないようで、
時計に視線を向けてから時間を確認していました。
私も時計へ視線を向けてみると、時刻は午前11時4分です。
もうすぐお昼ですね。
私はそう思っただけなのですが、
総魔さんは何かを考えているようです。
「そろそろ時間だな」
時間?
何の話でしょうか?
聞いてみようと思う前に、
総魔さんと一緒に試合場E-3へと移動することになってしました。
ここで何をするのでしょうか?
今まで自分のことばかり考えていて詳しい話を聞くことをすっかり忘れていたのですが。
確か、今朝の段階で総魔さんは受付のお姉さんと話をしていたはずです。
あの時は試合の予定を話し合っているのかな?と考えていたのですが、
もしもそうだとするとこれからここで総魔さんの試合が始まるのでしょうか?
『事前告知』と『選択権』の条件があるせいで今まで試合が出来なかった総魔さんでしたが、
これからここで試合をするのかもしれません。
だからでしょうか?
私達のすぐ側には里沙先輩と百花先輩もいます。
おそらくこれから始まる試合を観戦するつもりなんだと思います。
「試合場に来たということは、ここで試合をするんですよね?」
総魔さんに尋ねてみました。
ですが…。
「ああ、そうだ。だが、戦うのは俺ではない」
「えっ?」
総魔さんの試合ではないそうです。
「どういうことですか?」
「俺も試合をするが、その前に優奈に戦ってもらうつもりだ。人探しのついでに呼んでおいたからな」
ついでに?
誰かを呼んでる?
…と言うことは…。
総魔さんの試合前に私がもう一度試合をするということでしょうか?
首を傾げてしまいます。
「誰と戦うんですか?」
「それは…」
総魔さんが話し始めた直後に。
「邪魔してすまない」
見覚えのある男性が歩み寄ってきました。
私の対戦相手、ではありませんね。
というか、そもそも生徒でもありません。
「二人共、元気にしているか?」
笑顔で歩み寄ってきたのは、ルーン研究所の所長さんの黒柳さんです。
「あっ、はい。おはようございます」
「久しぶりだな」
頭を下げて挨拶をする私とは違って、
総魔さんは軽く返事を返しただけでした。
「ははっ。そうだな。丸々二日ぶりか?」
そうですね。
二日前の午前中に研究所にお邪魔して以来ですので、
丁度二日前になると思います。
「今日は俺も結界要員として呼び出されたんだが、一応、試合前に挨拶くらいはしておこうと思ってな。調子はどうだ?」
「問題ない」
「それは良いことだ。今回もきみの試合を楽しみにして来たんだが、その様子だと予想以上のものが見れそうだな」
満足そうに頷く所長さんを見て、
総魔さんはほんの少しだけ楽しそうな表情を浮かべてから答えていました。
「予想以上の展開という意味では、おそらく次の試合で面白いものが見れるはずだ」
え?
次の?
それって…。
「ほう。楽しみだな」
えっと、えっと…。
楽しそうに話し合ってる二人ですけど。
今の会話には気になる部分がありましたよね?
所長さんはきっと勘違いしているはずです。
『次の試合』は総魔さんではなくて私だからです。
つまり。
総魔さんは、私の試合で面白いものが見れると言っているんです。
それがどういう意味なのか私には分かりませんが。
総魔さんとの会話に満足した所長さんは、
笑顔を浮かべながら立ち去ろうとしました。
ですがその前に。
「全力で結界を展開する事だ。『全力』でな」
後ろ姿の所長さんに向けて、総魔さんが話し掛けていました。
警告するかのような口調だすね。
何もかも見透かしているような、そんな圧迫感を感じるほどでした。
「もちろん、そうさせてもらおうつもりだ」
振り返ることもなく返事をした所長さんは、来た道を戻ってしまいます。
…え~っと。
ちゃんと説明しなくていいんですか?
ものすごく不安を感じてしまうのですが。
どうしていいか分からずに混乱してしまう私の耳に…
『ドタバタ』と、駆け足で近付いて来る足音が聞こえてきました。




