ろくでもないこと
…到着~。
「もう着いちゃったね。」
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまいます。
「もうって言うか、結構遠かったけどね。」
…あう~。
…霧華ちゃんはそうだよね。
ここからまた商店街の近くまで帰ることを考えるとすごく遠回りです。
「ごめんね。」
「別に良いわよ。どうせ暇だし。」
「あれ?そうなの?じゃあじゃあ、お家に寄っていく?」
「嫌!行かない。」
時間があるならと思って尋ねてみたのですが、
あっさりと断られてしまいました。
「お馬鹿の家なんて入ったら、きっとろくでもないことが起こるに決まってるし。面倒臭いから止めておくわ。」
「え~?ろくでもないことって何~?」
「本気で分からないの?お馬鹿に振り回されて疲れそうってことよ。」
…あうっ。
否定できませんでした。
だからでしょうか?
霧華ちゃんに冷たい目で見られてしまいました。
…確かに霧華ちゃんといるとはしゃいじゃうかも。
霧華ちゃんといるとついつい構いたくなってしまうので、
いつも以上にはしゃいでしまう気がします。
「私といると疲れる?」
「ものすごくね。」
「はぅ~。」
一言で断言されてしまいました。
「それでも、他の人達に比べればまだマシだけどね。」
…えっ?
「そうなの?」
「………。どうでも良いことよ。」
…?
霧華ちゃんは質問には答えないまま、
私から手を放して少し距離をとりました。
「まあ、あれよ。お馬鹿はお馬鹿なんだから、あんまり余計な気を使わなくて良いのよ。私は私だし、あんたはあんた。それで良いの。」
…ほえ?
「ただそれだけで良いのよ。」
…ん~?
…よく分からないよ?
霧華ちゃんはとても複雑な思いを込めた言葉だけを残して私の傍から離れてしまいました。
「まあ、また暇があったらお馬鹿の相手くらいしてあげるから、今日はさっさと家に帰りなさい。」
…あ、うん。
「ありがとうね♪」
「別に…。」
「うん。お礼はいらないんだよねっ♪」
「………はぁ。」
霧華ちゃんの言葉を遮って話す私を見つめてから、
霧華ちゃんは小さくため息を吐いていました。
「ホントにお馬鹿は変わってるわね。」
「そうかな~?」
自分では普通だと思うんですけど。
「変かな~?」
「絶対に普通じゃないわ。」
…あう。
全力で断言されてしまいました。
「まあ、そんなことはどうでも良いけどね。とりあえず私は帰るからお馬鹿もさっさと帰りなさい。」
「うん♪そうするね~。」
「じゃあね。」
「うん。ばいばい霧華ちゃん♪」
「………。」
小さく手を振りながら笑顔で霧華ちゃんを見送ると、
霧華ちゃんはいつもと同じように少し照れ臭そうな表情で背中を向けてから全力で走り去ってしまいました。




