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THE WORLD  作者: SEASONS
5月6日
3669/4820

私の弱み

「まあ、学園で何があっても私には関係ない話だけどね。」



…え~?



「そうなの?」


「私は生徒じゃないし。」



…それは、そうなんだけど。



「でもでも、霧華ちゃんも魔術師なんだよね?」


「そうだけど、魔導学園には年齢制限があるから私はまだ入れないのよ。って言うか、あのお姉ちゃんがいるから行きたくないだけだけどね。」


「仲が悪いの?」


「険悪って言葉を知ってる?」



…あ~、うん。



「何となくは…。」


「別に喧嘩するとかそういう意味じゃないけどね。それでもお姉ちゃんはお父さんやお母さんの代わりに私を育ててきたっていう事実があるから、精神的に優位に立ってるみたいね。」



…精神的に?



「それって、どういうこと?」


「お馬鹿に分かるように言えば、私の弱みを握ってるってことよ。」


「弱み?」


「誰だって触れてほしくないことの一つや二つはあるでしょ?」



…ん~。



「多分…。」



すぐには思い付きませんが、

あるとは思います。



「霧華ちゃんの弱みって何?」


「それを・ここで・話すと・思うの?」


「うん。聞いたら教えてくれそうかな。」


「はぁ。どこまでもお馬鹿ね。まあ別に良いんだけど、内容自体はどうでも良いようなくだらない話よ。私のおむつを変えてあげてたとか、おねしょの後始末をしてあげてたとか、その程度の話でしかないわ。それでも言われると腹が立つから出来る限り会わないようにしてるのよ。」



…あははっ♪


…そういうことなんだ~。



「仲が良いんだね。」


「どこがっ!?」


「ん~。楽しそうだよ♪」


「全っ然楽しくないっ!!」



…えぇ~?



「そうかな~?」



私からすればごく普通の姉妹の会話だと思います。



…それでも霧華ちゃんからすれば馬鹿にされてるように聞こえるのかな?



百花さんは百花さんで霧華ちゃんに関する話題を全力で避けていたので、

実はもっと複雑な事情があるのかもしれません。



…それでも姉妹喧嘩の範囲内だよね♪



思春期と言うか。


反抗期と言うか。


霧華ちゃんはそんな感じだと思います。



百花さんの気持ちは分かりませんけど。


もしかすると反抗的な霧華ちゃんの相手をするのに疲れたのかもしれません。



…24時間ずっと一緒にいると、お互いに大変なのかな~?



「そう言えば昨日のお話だけど。霧華ちゃんってすごく頭が良いんだよね?」


「ああ、うん。まあ、お馬鹿よりは…ね。」


「う、うん。そうだね。だけど魔導学園の試験は受けてないって言ってなかったっけ?それって年齢制限があるから?」


「それもあるけど、それだけじゃないわ。」


「もしかして百花さんがいるから?」


「そうよっ!会いたくないのよ!何か文句でもあるのっ!?」


「ううん。ただ何となくどうしてかな~って思っただけだよ♪」


「ふん!大した実力もないくせに、私よりも早く生まれたっていうだけで私を子供扱いするから大嫌いなのよっ!!!」



…あぁ~。


…なるほど。



結局はそういうことです。


霧華ちゃんはちゃんと自分を見てほしかったんです。



年齢とか。


才能とか。


家族関係とか。


そういうことじゃなくて。



自分を自分として見てほしかったんだと思います。



…だから意見が合わないんだね~。



妹として見る百花さんや。


娘として見るご両親や。


才能を気にかける人達のような偏った見方ではなくて。



霧華ちゃん自身の全てを認めて受け入れてくれる人を捜していたんだと思います。



…心を許しあえるお友達が欲しいんだよね♪



きっとそういうことだと思います。



「ねえねえ、霧華ちゃん。」


「な、何よ?」


「大好きだよっ♪」


「………。」



ちゃんと向き合って好きだと伝えると、

霧華ちゃんは顔を赤くしながら俯いてしまいました。



…可愛い~♪



もう本当に心の底から霧華ちゃんが大好きです。



「これからもお友達でいてね。」


「ふん。気が向いたらね」


「うん!今はそれでも良いよ。」



だけどいつかは霧華ちゃんにも私のことを大好きって言わせてみせます。



…私の野望、かなっ♪



絶対に叶えたい願いです。



「霧華ちゃん♪」


「…だから何なのよ。」


「ずっとお友達だよ♪」


「…ったく。お馬鹿は気楽で良いわね。」


「ありがとう♪」


「…別に褒めてないし。」


「うん♪そうだよね。」



何でも良いです。


こうしているだけで私は幸せだから。



「霧華ちゃんと出会えて良かったよ♪」


「…変なやつ…。」



…えへへへ~。



呆れ顔で私を見つめる霧華ちゃんも大好きです。



「もうすぐお家に着くね。」


「…そうね。まあ、お馬鹿といる時間はそんなに悪くないわ。」


「やった~!霧華ちゃんが褒めてくれたよ~♪」


「………。どこまでもお馬鹿ね。」



…そうかな~?



ずっと呆れっぱなしの霧華ちゃんですが、

それでもどこか少しだけ微笑んでいるように見えました。



「気が向いたらまた送ってあげるわ。」


「うんっ♪」



今日も楽しい気持ちで心を一杯にしながら、

霧華ちゃんと手を繋いで歩き続けました。




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