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THE WORLD  作者: SEASONS
5月6日
3657/4820

ここに届いてほしい

「おはようございます!」


「あっ!?おはよう、成美ちゃん。来てくれて早々に申し訳ないんだけど、温室からお花を持ってきてくれないかしら?」


「はいっ。良いですよ~。」



お母さんに挨拶をすると、

すぐにお仕事を頼まれました。



「何を持ってくればいいですか?」


「カトレアよ。お店の前に並べてほしいの。それ以外のお花は様子を見ながらでも良いんだけど、カトレアだけは出しておいてくれないしら。」


「あ、はい!すぐに出しますね~。」


「ごめんね。他のお花はともかく、カトレアだけは毎日お店の前に並べないといけないから、急いでお願いね。」


「は~いっ♪」



…カトレアは一番大事だよね~。



優奈さんが大好きだったカトレアだからです。


私もお花の中では一番好きですけど。


お父さんとお母さんにとっては大切な思い出があるお花なので、

いつも最後に出して最初にしまうようにしているそうです。



…暖かい地域で咲くお花だから、本当はあまり長い時間は外に置けないんだよね。



本当なら温室で保管しないといけないお花なのですが、

お父さんとお母さんは優奈さんへの想いを込めて今でもお店の前にカトレアを並べ続けているそうです。



例え奇跡以上に難しい願いだとしても。


例え絶対に有り得ない不可能な出来事だとしても。


それでももしも願いが叶うのなら。



…優奈さんに見てほしいな。



お店の前で咲き誇る大きなカトレアの花を優奈さんにも見てほしいと思います。



ここにはきっと。


これからもずっと。



…カトレアはあるんだよ。



優奈さんが大好きだったカトレアのお花はこれからもずっとここにあるんです。



…ここが優奈さんの帰る場所なんだよ♪



私にとって帰れるお家があるように。


優奈さんにとっての帰る場所もここにあるんです。



…だから例え想いだけでも良いから。



ここに届いてほしいと思います。



…絶対に枯らせないからね♪



カトレアだけはこれから先に何があっても絶対に枯らせません。



…大切に守るよ~。



私と優奈さんを繋ぐ最初で最後の思い出の花です。



…優奈さんの分まで頑張るからね♪



沢山の恩を返すために。


私はこれからもここで働き続けたいと思います。



「いらっしゃいませ~♪」



次々とお店に来るお客さんに精一杯の笑顔で挨拶をしながら、

今日もお仕事をさせていただくことにしました。


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