自分でももう
…あれって由香里さんだよね?
「由香里さん!」
「へ…っ?って!?えぇぇぇ~!!」
由香里さんに気付いて呼び掛けた直後に、
私に気付いた由香里さんっも驚いた表情を浮かべながら動きを止めていました。
「ど、どうしてここに成美ちゃんが!?って言うか、人質ってどういうこと!?」
…さ、さあ?
…何がどうなってるのでしょうか?
「あ、あは…はは…っ。」
自分でももう笑うしかありません。
決して油断してるつもりはないのですが、
突然起こる事件に対応できるだけの才能なんて私にはありませんでした。
「また捕まっちゃいました…。」
「…うわぁ~。」
自分でも呆れてしまいますが、
私が捕まっているせいで由香里さんは攻撃を躊躇しているようです。
「成美ちゃんを巻き込む訳にはいかないし…どうしようかしら?」
「へへっ。どうやら知り合いのようだな。」
「ツイてるぜ。これで逃げ切れそうだな。」
戸惑う由香里さんに気付いたのか、
男の人達は勝利を確信したようでした。
そして私を人質にとったことで由香里さんが手出しできないと思っているようですが、
男の人達はまだ肝心なことに気付いていません。
…今日は大丈夫だよ。
私は落ち着いて行動できます。
…私も戦えるんだよ。
助けてもらってばかりではなくて自分でも戦えるんです。
…あまり好きじゃないけどね。
傷付けるのは得意ではありませんが、
由香里さんを困らせるわけにもいきません。
「私なら大丈夫ですよ~。」
「「「は?」」」
はっきりと宣言した私に男の人達が視線を向ける前に攻撃魔術を発動しようとしました。
…ですが。
「トールハン…」
「ファイアー・ボール!!!」
…え?
トールハンマーを展開しようとした私の魔術が発動するよりも先に、
私でも由香里さんでもない全く別の方角から炎の玉が飛んできて、
私を捕らえている男の人に直撃していました。
「ぐっ!?ぐあああああっ!!」
全身に炎を浴びた男の人は私から手を離してくれました。
そして地面に転がりながら痛みに苦しんでいます。
そんな危険な状況の中で。
「ファイアー・ボール!!!!」
再び炎の玉が飛んできて二人目の男の人に直撃しました。
「っづああああああああっ!!」
「だ、誰だっ!?」
「これだから馬鹿は気持ち悪いって言うのよっ!!」
炎を浴びて倒れた男の人が路上で転げ回るすぐ側で、
最後に残っていた男の人が背後に振り返った瞬間に霧華さんが三度目の炎を放ちました。
「ファイアー・ボール!!!!」
「う、うわああああああああああっ!!!!!」
たっぷりと憎しみを込めた霧華さんの炎の玉は、
私の目の前に立つ男の人を容赦なく炎で包み込んでしまいました。




