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年齢に追い付くまで
…ごめんね。
…ここにあるお姉ちゃんの思い出をもらっていくね。
机の中に仕舞ってあったお姉ちゃんのお財布を手にとって、
予備に置いてあったお姉ちゃんの香水も借りることにしました。
…お姉ちゃんの匂いや思い出を忘れたくないから。
「だからこれからは私が使わせてもらうね。」
きっとお姉ちゃんは笑顔で『どうぞ』って言ってくれると思います。
「ずっとずっと大切にするからね。」
お姉ちゃんの思い出を大事に抱きしめながら、
クローゼットに仕舞ってある服も借りることにしました。
「お姉ちゃんの年齢に追い付くまで、お姉ちゃんの思い出を借りるね。」
いつかお姉ちゃんの年齢を越えて。
私がちゃんと大人になれるまで。
せめてそれまでは、
もう少しだけお姉ちゃんに甘えていたいです。
「もう少しだけ…一緒にいてね。」
私が一人前の大人になるまでで良いんです。
「もう少しだけ、お姉ちゃんの温もりを感じていたいから。」
お姉ちゃんの服に着替えて。
お姉ちゃんの香水も借りて。
お姉ちゃんのお財布も翔子さんのお財布と一緒に優奈さんの鞄にしまい込んでから。
今日のお出かけの準備を整えました。




