ささやかな願い
《サイド:近藤悠理》
ん~。
お腹すいたかも…。
次の会場に向かう前に、一度食堂に向かおうかな?
もうお昼だしね。
お腹が空いたっていう理由もあるけれど、
午前中からずっと気が張り詰めていたから今は少し休みたいっていうのが本音かな。
まあ、馬鹿との試合で精神的に疲れたって言った方が正しいかもしれないけどね。
あとで面倒なことにならなければいいんだけど。
そんなことを願ってるうちに食堂へたどり着いていたわ。
…でも、ね。
いつもなら優奈がいるはずのに、今日も私は独りぼっちなのよ。
寂しさと虚しさが押し寄せて来るわね。
会場を出て、独りきりの自分を自覚するたびに思うの。
私の心は優奈に支えられていたんだな…って思うのよ。
優奈がいたから私は孤独じゃなかった。
優奈がいたから私は笑えてた。
そう思う。
だから、優奈に会いたいな。
会って話がしたいな。
それが私のささやかな願いなの。
とても小さな願いだけれど、私は心の底から願ってる。
ねえ、優奈。
今、どこにいるの?
ここにくれば会えるかもしれない、なんて。
そんな期待を込めて食堂を見渡してみる。
だけど…。
数千人が集まる食堂の中でいるかどうかも分からない優奈を探すなんて出来るはずがないわよね。
食堂内を駆け回れば見つかるかもしれないけれど。
優奈に会えたとしても、私はどうしたらいいのかな?
何を話せば良いのかな?
自分でも分からない。
離れる決心をしたのに、それなのに優奈を探し出して、何を話せば良いの?
迷いを抱える心に対して自問自答したところで答えは返って来ないけど…。
それでも優奈に会いたいって思う。
だけど…ね。
会ってどうすればいいのかは分からないままなのよ。
今はまだ自信を持って優奈と向き合えるほど強くなんてないから。
だから優奈と出会えてもまっすぐに向き合うことが出来ないって思うの。
会って話をしたいけれどね。
だけどもしも今ここでそうしてしまえば…。
きっと私はもう立ち上がれないって思う。
自分を誤魔化して妥協してしまったら私はもう、私ではなくなってしまうと思うから。
決意を捨てて優奈に甘えてしまったらきっと…。
私はもう立ち上がれないと思うの。
だから優奈を捜すのは止めたわ。
今はまだ会えないから。
会えば私の心は折れてしまうから。
きっとそうなってしまうから。
だから私は迷うことを止めてまっすぐに歩きだすことにしたの。
今はまだ私は優奈に会わない。
例え出会ったとしても振り返らない。
ちゃんと向き合えるようになるまで。
それまでは絶対にくじけないわ!!




