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THE WORLD  作者: SEASONS
4月7日
296/4820

操作

「さて、ここからが本題だが…」


不意に話し始めた所長さんに私達の視線が集まります。


「天城総魔君に関する分析はどうだ?」


藤沢さんに尋ねる所長さんですが、

藤沢さんは静かに首を左右に振りました。


「現段階ではまだ正確なことは判断できません」


「ならば、仮説ではどうだ?」


「仮説でしたら可能です」


藤沢さんは少し考えてから話し始めました。


今回は席を立たずに、

乱雑に並べられた資料から必要なものを寄せ集めて一カ所にまとめています。


「現在、吸収の力が封印されていることで正確な分析が出来ないのですが。過去の記録と今回の実験結果を照らし合わせれば推測は可能な範囲内だと思われます」


推測はできると前置きしてから、藤沢さんが説明を始めます。


「天城総魔さんの能力に関して相応しい定義は現在のところ存在していませんが、ひとまず仮定として『操作』という言葉を使わせていただきます」


総魔さんの能力を操作と仮定した上で、

藤沢さんは書類を並べ替えました。


「魔術の力の流れを組み替えて別の魔術に『変換』した事実に関しては実際に確認しましたので疑いようがありません。そして先程、所長への魔力の『供給』も確認しました。以前の実験記録から『分解』と『吸収』も確認出来ています。さらに吸収した魔術を翼へ『転移』したことも『保管』したことも確認されていますので、もはや彼に関してその特性に疑いようはありません。一人の研究者として断言できます。彼の特性は魔力の操作で間違いないと思います」


一通り話してから、藤沢さんは仮説の説明を終了しました。


「ふむ。西園寺君はどう思う?」


「私も瑠美の意見に同意します。今後も実験を繰り返してみないことには正確な判断は出来ませんが、現時点では瑠美の判断がもっとも正解に近いかと思います」


西園寺さんも迷うことなく、即答していました。


「ふむ。やはりきみもそう思うか」


満足したかのように笑顔で頷く所長さんは次に総魔さんへと視線を向けました。


「と、まあ、こういう結論に至ったわけだが、全てきみの予想通りというわけだな」


「ああ、そうだな」


「封印した力を補うには、余りある結果といえるがどうだ?ルーンは作り出せそうか?」


所長さんが問いかけた瞬間に西園寺さんと藤沢さんの表情が変わりました。


笑顔が消えて、真剣な表情になったんです。


ただ、ルーンって何なのでしょうか?


それも私には分かりません。


ここがルーン研究所で所長さんは研究すべき『何か』を総魔さんに問い掛けているようです。


ですが、総魔さんは所長さんの質問を否定しました。


「いや、現段階ではまだ無理だ。この力がどの程度の効力を持っているのか、まずはそれを知らなければならない」


「ふむ。必要であれば俺達も協力するが?」


「いや、実際に試合の中で実験した方が早いだろう」


「ああ、そうだな。確かにそうかもしれんな」


お互いの意見が一致したことで話を終える総魔さんと所長さん。


今までは自分のことだけで頭が一杯だった私ですが、

今は総魔さんの力のことも気になっています。


総魔さんの実力は先程の実験で見ましたが、

とても私では敵わないほど圧倒的なもののように感じたからです。


『吸収という能力』


その一点において私は総魔さんを上回っているという話でしたが、

それ自体が私には信じられない話だと思います。


…というよりも。


どれだけ説明を受けても自信がもてないからです。


信じる、信じない以前の話かも知れませんね。


ただ…。


そんな私でも総魔さんの役に立つことが出来たような気はします。


あくまでも間接的にですが。


私の能力をきっかけにして総魔さんも自分の能力に気付くことが出来たのなら、

少しは恩返し出来たような気がするからです。


…と言っても、私自身は何もしてないんですけどね。


さりげなく総魔さんへと視線を向けてみると。


「………。」


私の視線に気付いたのでしょうか?


総魔さんも私に視線を向けてくれました。


「用件は済んだ。そろそろ行くか?」


「あ、はい」


返事を返して時計に視線を向けてみると。


12時15分になっていました。


すでにお昼を過ぎているようです。


気がつけば、一時間以上ここにいたようですね。


「協力してもらって助かった。感謝している」


「いやいや、むしろ情報を提供してもらったのは俺達の方だ。いい実験資料が手に入ったからな。今後の研究の参考にさせてもらうつもりだが構わないか?」


「ああ、好きにすればいい」


「ははっ。だったら、好きにさせてもらおう。まあ、ひとまず実験は終わったが、また何かあればいつでも来てくれ。特に、きみ達のルーンが完成したあかつきには、是非とも調査させてもらいたいからな」


「そうだな。機会があれば頼む」


「楽しみに待っておく」


「ああ、それじゃあな」


挨拶を終えて席を立つ総魔さんに遅れないように、私も急いで席を立ちました。


「あの、その、ありがとうございました」


私も所長さん達に挨拶をしてから、

総魔さんと一緒に部屋を出ることにしました。


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