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THE WORLD  作者: SEASONS
4月6日
254/4820

神様だって

《サイド:美袋翔子》


『キーン…コーン…カーン…コーン…。』


午後6時のチャイムが学園中に響き渡ってる。


その音を聞いた私は時計に視線を向けてから小さくため息を吐いたわ。


その理由?


もちろんあっという間だったからよ。


本当にね。


どうしてこうも時間の流れが早いのかしら?


神様を怨みたくなる気持ちで、精一杯の背伸びをしてみる。


隣に座っている総魔はまだ研究資料を読み続けてるわね。


だけど、基本的に図書室は6時までなのよ。


あと30分くらいは退出時間の範囲内として認めてくれるけれど。


それ以上ここに留まる事は認められていないわ。


だからそろそろ片付けを始めなければいけない時間なのよ。


「総魔。そろそろ時間だから片付けないと、図書委員とかに怒られるわよ」


「もうそんな時間なのか?」


時計に視線を向ける総魔が時刻を確認してから席を立ったわ。


「仕方がない。続きはまた今度だな」


作業をあきらめて。


積み上げられている資料に手を伸ばした総魔が資料を片付けてく。


「私も片づけるわね~」


協力して片付けることにしたわ。


その作業は10分もかからなかったと思う。


50冊の資料はすぐに片付いたんだけど、

筆記用具類はまだテーブルの上に残っているわね。


「あとはこれだけね~」


最後に鞄の中に筆記用具を押し込むと、

テーブルの上はゴミ一つ残らずに綺麗になったわ。


「おっけ~。じゃあ帰ろっか?」


「ああ、そうだな」


二人並んで出口を目指す。


5時間近い時間を総魔と二人きりで過ごすことが出来たのよ。


それだけで幸せ一杯だったと思うわ。


まあ、調べ物の途中に何度か見知らぬ人が来たこともあったけどね。


そのたびに全力で睨みつけて追い払ってたことは総魔には内緒よ。


私の幸せに土足で踏み込むような人は例え神様であっても許さないわ!


それだけの気合いを込めて、二人きりの時間を満喫していたの。


だけどね。


それも時間切れで終わってしまうのよ。


本当に…。


こういう時には神様に祈りたくなるわね。


時間が止まれば良いのに!


なんてね。


自分でも言ってることが無茶苦茶だって思うけど。


この気持ちはどうしようもないのよ。


だって思っちゃうんだから!


仕方ないでしょ?


…ってまあ。


自分の心に問い掛けてみても、

当然返ってくる答えは私自身の言葉なんだけどね。


都合が良いのは分かるけど。


時と場合によっては神様だって敵だと思うし味方にも思うの。


それが『乙女心』ってやつじゃない?


なんて、心の中で言い訳していても仕方がないんだけどね。


とりあえず今は図書室を出なきゃいけないんだけど。


不意にさっきの席に視線が向いたわ。


だけどさすがに今は誰も座ってないみたい。


さっきの女の子達はもう帰ったようね。


探してみてもその姿はどこにも見えないわ。


まあ、さすがに5時間も図書室に篭る生徒はそうそういないでしょうしね。


いないならいないで別にいいやって思いながら総魔と二人で歩みを進めてく。


次第に近付いていく出口。


ここを出たら、今日は総魔とお別れなのよ。


それがもどかしく感じるわ。


もっと一緒にいたい!って思うけれど。


沙織との約束もあるのよね。


両方を選ぶことは出来ないから、どちらかを諦めなければいけないのよ。


はうぅぅ~。


最高難易度の選択肢だと思うわ。


どっちも大切な時間なのよ。


どうにかして選ばなくてもいい方法があればいいのに…。


なんて、悩んでも解決しないけど。


考え事をしてる間に出口にたどり着いてしまっていたわ。


はあ…。


仕方がないわね。


心の中で決心して、総魔と向き合うことにしてみる。


「じゃあ、今日はここでお別れね。沙織も待ってると思うし、私は研究所に行ってくるわ」


「そうか。気をつけてな」


「うん。ありがとう!総魔も気をつけてね♪」


「ああ」


見送ってくれる総魔に手を振ってから私は図書室を後にしたわ。


だけど…。


もったいないことをしたかな~?


ちょっぴり後悔を感じるけれど。


今は研究所に向かって走ることにしたわ。


今日がダメでも明日があるからよ。


明日は朝からずっと総魔と一緒にいるんだからっ!!


そんなふうに心の中で誓いながら。


沙織に会うために研究所に走り続けたわ。


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