表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
THE WORLD  作者: SEASONS
4月6日
239/4820

妄想全開

《サイド:美袋翔子》


ん~。


私と総魔が昼食を始めてから、しばらくして沙織が帰ってきたわ。


「お待たせしました」


いつもと変わらない微笑みを浮かべながら席につく沙織。


手にしているのはサンドイッチと紅茶を載せたお皿だったわね。


昼食に限って言えば、沙織もサンドイッチを食べてることが多いと思うわ。


まあ、私と違って、まだその方が栄養はあるかもしれないけどね~。


私が手にしてるのはまあ、あれよ。


美味しいけど栄養は全く期待できない糖分たっぷりの菓子パンよ。


中くらいの揚げパンとおっきなドーナツ。


そして手の平と同じくらいのメロンパンなのよ。


どれも栄養素には欠けるわね。


でもまあ、あまり気にしてないわ。


いつもの事だしね~。


ただ。


優雅な手つきでサンドイッチに手を伸ばす沙織は私と似たようなものを食べているはずなのに、

何故か沙織の仕種には気品すら感じるのが不思議だと思うわ。


どこからどう見ても完璧なお嬢様なのよ。


実際にはお金持ちの家に生まれたわけでも、どこかの国のお姫様でもないけどね。


それなのに上品な雰囲気を醸し出す沙織は別世界の存在に思えるわ。


そんな沙織に対して…。


菓子パンにがっつりかぶりつく私の姿は気品とか優雅なんて言葉とは程遠いでしょうね。


自分でもそう思うわ。


だから、さりげなく総魔に視線を向けてみる。


全くと言って良いほど何を考えているのか分からない総魔だけど。


やっぱり総魔も沙織みたいな人の方が好みだったりするのかな?


全く表情に変化を見せない総魔は私の視線にさえ気付いていないのか、淡々と食事を続けてる。


うぅ~ん。


どうなのかな~?


というか。


気づいてないというよりも気にされてないっていう感じな気がするのよね…。


総魔はどういう女の子が好みなのかな?


とんでもなく気になる質問なんだけど。


聞いてみたところで、あんまり返事は期待出来ない気がするわ。


たぶん。


興味ないとか言われちゃいそうだし。


でもね、でもね。


それでも私みたいに元気だけが取り柄?みたいな子とか。


沙織みたいな、お嬢様?とか。


何か少しくらいは情報が欲しいのよ。


そうすれば、ちょっとくらいは総魔の好みに近付けたり…なんて。


思ったり!


考えたり!


妄想したり!


するんだけどねっ。


…って、何だか話が逸れてきてる気がするわね…。


心の中の葛藤を押さえ込みつつ。


こっそり沙織に視線を向けてみる。


ただそれだけのことなのに、何故かすぐにきづかれてしまったわ。


「どうしたの?」


「ぇ!?ぅ、ううん!?何でもないわっ!」


「そう?」


不思議そうに私をみつめる沙織。


何故か心臓のドキドキが止まらない。


どうしてか分からないけど、沙織には何もかも気付かれているような気がするの。


出来る限り勘付かれないようにしてきたつもりなんだけど。


もしかしてバレバレなの?


うぅ~。


頭を抱えたくなる心境でジンワリと涙目になる私。


恥ずかし過ぎて頭がパニックになりそうだったわ。


どうか気付いていませんようにっ!!


必死に心の中で願いつつ。


不意に浮かんだ疑問で話を変えてみることにしたわ。


「そう言えば、龍馬はどうなったの?」


「あら?言ってなかったかしら?龍馬なら、もうすぐ来るはずよ」


「え?そうなの?」


首を傾げてみる。


もしかして妄想全開で大暴走してたから聞こえてなかったのかな?


それとも普通に会話に出てこなかったのかな?


どっちかわからないけど。


龍馬の話は全く記憶になかったわ。


まあ、別にいいんだけどね。


龍馬も来るなら、ちょっぴり真面目な話が出来るのかな?


そんなふうに考えながら待っていると。


5分もしないうちに龍馬が姿を見せたわ。


「ごめん、お待たせ」


謝りながら席につく龍馬だけど。


龍馬も定食を選んできたらしくて、

ちゃんとしたおかずがお盆に並んでいたわ。


うんうん。


これは、あれね。


おかずの内容から予想すると総魔とは対極に位置する『満腹定食Aランチ』と見た!!


全てが大盛で、なおかつ栄養バランスを徹底的に追求した学生ご用達の逸品!


普段はあまり食欲旺盛とは言い難い龍馬なのに、

その龍馬が満腹定食は全く想像できない選択だったわ。


「今日は珍しく食べる気満々じゃない?」


笑顔で尋ねてみると。


「色々あってちょっと疲れててね。しっかり食べておいた方がいいかなって思ったんだよ」


龍馬は照れ臭そうに微笑んでた。


ふ~ん。


何かあったのかな?


よくわからないけど。


しっかり食べたいって言ってから龍馬も食事を始めたわ。


でもまあ、満腹定食って言ってもそんな馬鹿みたいに特盛とかそういうことじゃないから普通に食べれる量だとは思うけどね。


それでも普段の龍馬から考えると頑張った方だと思うわ。


…って言うか。


普段、真哉がバカみたいに食べてる姿を見てるせいかな?


龍馬にしろ、総魔にしろ、もっと食べたほうがいいんじゃない?って思うのよね~。


まあ、真哉みたいに際限なく食べるのも問題だとは思うけど。


でもそれぐらいの方が健康的な気はするわよね?


…って、私が言っても説得力がないか…。


両手で掴んでいる菓子パンに視線を向けてみる。


むしろ私の方こそ、ちゃんと食べなさい!って感じかもしれないわ。


だからもう考えるのは止めようかな?


何かを諦めるような心境で、無心になって食事を進めることにしたわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ