お互いに
《サイド:美袋翔子》
『キーン…コーン…カーン…コーン…。』
ん?
あれ?
学園中に響く鐘の音に気付いて、近くの時計に視線を向けてみる。
時刻は丁度12時。
お昼の時間だったわ。
もうそんな時間なの?
そんなに長くここにいたつもりはなかったんだけど。
思っていた以上に勉強に集中してたみたいね。
個人的にはこのままもう少し総魔と二人きりでいるのも良いとは思うんだけど。
一応沙織との約束もあるわけだし。
そろそろ食堂に向かったほうがいいんじゃないかな?
まあ、最終的にどうするかは総魔次第なんだけどね。
とりあえず。
積み上げられた書物をテーブルの上に置いて、総魔に呼び掛けてみる。
「ねえ、総魔」
「ん?どうした?」
振り向いてくれた総魔に。
「もうお昼の時間だし、そろそろご飯食べに行かない?」
時計を指差しながら食事に誘ってみたわ。
「もうそんな時間か?」
一度だけ時計に視線を向けた総魔だけど。
すぐに私に振り返ってくれたわ。
そして。
軽くお腹を押さえる私を見て優しく微笑んでくれたのよ。
「そうだな。手伝ってもらった恩もあるからな。昼食は俺が奢ろう」
えっ?
本当にっ!?
「いいの!?」
「ああ。問題ない」
片付けもそこそこに、総魔は席を立って外に歩きだす。
「行くぞ」
「あ、うん!」
急いで総魔を追いかけたわ。
って言っても、おごってもらえるからじゃないわよ?
あまりお金がない総魔に奢って貰うのは気が引けるけど、
総魔の気持ちを断るようなことは出来ないからよ。
私としてもね。
好きな人に奢ってもらえるのはやっぱり嬉しいのよ。
それに、貰った分はちゃんとあとで返せばいいんだから。
それはそれで楽しみが増えるわよね?
そうやってお互いに協力しあえるのって素敵じゃない?
そう思うから、私は総魔と並んで食堂に向かって歩きだすことにしたのよ。




