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THE WORLD  作者: SEASONS
4月6日
230/4820

見習ってもらいたい

《サイド:常盤沙織》


『キーン…コーン…カーン…コーン…。』


あら?


時計の音に気付いて、時計に視線を向けてみました。


気付けばすでに時刻は11時ですね。


お昼までまだ1時間ほどありますが、

そろそろ片付けを始めなければ食堂に着く頃にはお昼を回ってしまうかも知れません。


だからと言って特に困るということはないのですが。


約束の時間に遅れてしまうのは気が引けますので、予定よりも早めに行動したいとは思います。


そのために。


机の上に広げていた資料を片付けることにしました。


数多くある資料。


これらは全て成美の瞳を治療するために集めたものです。


瞳に関する医学書や光に関する科学図鑑など。


様々な研究資料になります。


それらを大切に仕舞い。


積み上げられた書籍を本棚の定位置へと返して。


使った物を全て整理整頓してから次の研究に必要なものを用意しておきます。


その一連の作業だけで10分ほどが過ぎていました。


ただ仕舞うだけなら簡単なのですが、

次の予定も考えながら整頓するとなるとどうしても手間がかかってしまいますよね。


もちろんその程度の手間を惜しむつもりはありませんし、

誰に見られても恥ずかしくない状態を維持したいと思っています。


あくまでも研究室の一角を間借りしてる立場ですからね。


常に綺麗にしておきたいと思うのです。


さて、と。


もう一度、時計を確認したあとで、

研究室の皆さんに挨拶をしてから食堂に向かうことにしました。


時間ギリギリで慌てなくて済むように、余裕を持って行動したいからです。


一通りの準備を終えたことで、最後に神崎さんの傍へと歩み寄りました。


「神崎さん」


呼び掛けてみると。


「ん?沙織君か」


神崎さんは笑顔を浮かべながら私に振り向いてくれます。


「もうお昼か?」


「はい。お友達と約束がありますので、お昼を頂いてきます」


「そうかそうか。食事は健康の源だからな。遠慮なく行ってきなさい」


「ありがとうございます」


頭を下げて感謝すると。


「それはそうと、今日の午後はどうする?」


神崎さんは質問を続けてきました。


「えっと、今のところは帰ってきて研究を続けるつもりでいます」


「ああ、なるほどな」


一旦、私の机に視線を向けた神崎さんはとても満足そうに頷いてから私に視線を戻しました。


「整理整頓、準備も完璧と言ったところだな。いつもながら性格が反映されていて綺麗な机だ。その上、見た目も美少女とあっては文句なしだな」


「ぇ、い、いえ…」


大きな声で笑い出す神崎さんのお世辞が恥ずかしくて、

少しだけ照れながら俯いてしまいました。


そんな私を面白そうに眺めていた神崎さんなのですが。


「カミさんにも見習ってもらいたいものだ…。」


何故か小さくため息を吐いてから嘆くかのように呟いていました。


「ふ…ふふっ」


「はは…っ」


神崎さんの嘆き声を聞いて失笑する職員の皆さん達。


私は直接会ったことがないのでどういう方なのか知らないのですが、

職員の皆さんは思い当たることがあるようで控えめに笑っていました。


「ははっ。まあ、そんなことはどうでもいいんだが、沙織君。時間は気にしなくていいから、ゆっくり休んできなさい。心を休めることは体を休めることよりも重要だからな」


「あ、はい。ありがとうございます」


もう一度神崎さんに頭を下げてお礼を言ってから、

ご迷惑にならない間に研究室を出ることにしました。


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