それぞれの方角
《サイド:常盤沙織》
学園の校門に到着しました。
今は翔子と二人きりです。
家から歩いて学園に帰ってきたのですが、
校門をくぐり抜けてから校舎に向かう途中で、翔子が足を止めました。
「どうしたの?」
尋ねてみると。
「え~っと…」
翔子は照れ臭そうな表情を浮見せながら、寮のある方角を指差しました。
ですが、そちらは私達の部屋がある女子寮ではありません。
龍馬達が住んでいる男子寮の方角です。
…と、言うことは…
どうやら翔子は男子寮に行きたいようですね。
「彼に会いに行くの?」
「うん。色々と話したいこともあるしね」
「あ~、うん。そうね。その方が良いかも知れないわね」
翔子は天城君に会いに行くつもりのようです。
私も翔子について行くべきでしょうか?
挨拶くらいはしたいと思うのですが、特にこれといった用事はありません。
それなのに押しかけるというのも変な感じですよね?
なので、翔子についていくのは諦めました。
それに…。
私も気になっている人がいます。
天城君と同じように力を失った龍馬は今どうしているのでしょうか?
それを確かめたいと思ったんです。
時間的に考えれば天城君はまだ寮にいるかも知れません。
ですが龍馬はすでに校舎にいる可能性が高いと思います。
龍馬は毎朝、校舎の屋上にある特風会に向かうからです。
毎日送られて来る報告書に目を通すのが日課になっていますので、
今から寮に向かってもおそらくいないと思います。
だから私達は別行動をとることにしました。
「私は一度校舎に向かうわ。たぶん龍馬はそちらにいると思うから」
「あ~、確かに。龍馬なら向こうっぽいわよね?じゃあ…」
翔子は校舎と寮のある方角の両方を交互に見比べてから私に振り返りました。
「私は向こうに行くね。一度見失うとなかなか会えそうにないし」
ええ、そうね。
確かに、会えないかもしれないわね。
ため息を吐きたくなる翔子の気持ちは私にも理解できます。
彼の行動は読めないからです。
実際に捜索したことがありますので、翔子の気持ちは私にも分かります。
機会を逃せば一日中でも会えない可能性がありえるのです。
「彼に会いにいくのはいいけど、そのあとはどうする?今日も集合するの?」
一応、確認のために尋ねてみたのですが。
「う~ん…。」
翔子は小さく唸ってから困ったような雰囲気で曖昧な笑顔を浮かべていました。
「総魔がどうするか分からないから、約束は出来そうにないかな~?」
「ふふっ。そうね。」
確かに天城君に関して私達が予定を組むのは難しそうです。
はっきりと拒絶されることはないかもしれませんが、
こちらの意図通りに動いてくれるとは思えないからです。
「それじゃあ、お昼にでも時間が合えば食堂で会いましょう」
「おっけ~♪」
元気よく返事をしてから、翔子は私から離れました。
「じゃあね~」
「ええ」
互いに手を振りながら、それぞれの方角へと歩きだします。
駆け足で去っていく翔子。
その後ろ姿を見送ってから、私も校舎へと急ぐことにしました。




