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THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
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決意の表明

《サイド:美袋翔子》


う~ん。


総魔が力を失ったの?


すぐには信じられない話だったけど。


嘘じゃないことは総魔の目を見ればすぐに分かるわ。


冗談じゃなくて、本当に力を封印したみたい。


『ホワイト・アウト』の吸収結界。

『エンジェル・ウイング』からのアルテマ。

『ソウルイーター』での多層攻撃。


総魔の力の象徴とも言える3つの力。


その全部が使えなくなったようね。


見た感じだと魔力そのものは特に変わったように思えないけど、

吸収の力を失った総魔の実力はかなりの勢いで低下してると思うわ。


もしかしたら、今の総魔が相手なら私でも余裕で勝てちゃうんじゃないかな?


そんなふうに思ってしまうほどよ。


もちろん総魔と戦うつもりなんてこれっぽっちもないんだけどね。


だから試合とかそういうことじゃなくて、

単純に心配だったから総魔に歩み寄って話しかけてみることにしたわ。


「ねえ、大丈夫なの?」


問い掛けてみると。


「問題ない」


総魔は小さく微笑んでくれる。


いつもと同じ返事だったわ。


だけどその言葉を聞くと自然と心が落ち着くのよ。


自分でも不思議に思うけどね。


もしかしたら自分が思っている以上に総魔の事が気になってるのかもしれないわ。


何気にそう思っちゃう。


だからと言って何かが変わる訳じゃないんだけど…。


ちょっぴり照れくさい感じはするかな?


でもでも、変に意識しすぎて視線を逸らすのもどうかと思うし。


いつも通りの冷静な表情の総魔をまっすぐに見つめてみる。


一応、力を封印したことによる影響は感じられないわね。


特に痛いとか苦しいとか、そういうことはないみたい。


だから、かな?


ほんの少しも後悔を感じさせない総魔を見ていたら、なんとなく私も決心できた気がするの。


総魔に出来ることなら、きっと私にだって出来るはずって思えたのよ。


行き当たりばったりと言うか、かなりいい加減な考えだって自分でも思うけどね。


そう思っちゃったから。


理事長に振り返ることにしたのよ。


「お願いがあります!」


私の勢いに押されたのかな?


理事長は僅かにたじろいだ様子で戸惑いの表情を浮かべてた。


「ど、どうしたの、翔子?」


困った雰囲気の表情を浮かべてるけど、

ここは覚悟を決めて理事長にお願いしてみることにしたわ。


「私にも指輪を下さいっ!!」


「えっ?」


戸惑う理事長にさらに一歩、歩み寄る。


「総魔と同じように、私も一から出直したいです!」


決意の表明って感じ?


総魔と一緒に居たいっていう理由ももちろんあるんだけどね。


それとは別に、私は私の潜在能力を知りたいって思ったの。


今の私の力って何なの?


正直な話を言うと自分でも良く分かってないわ。


だから潜在能力があるって言われてもイマイチ理解できない。


だけどね。


それでもまだ私に隠れた力があるのなら。


そして今よりももっと強く成れる可能性があるのなら。


私は総魔に近付けるのかもしれないって思えるの。


それに…ね。


私は自分でも気付いてる。


多分、このままだと私はいつまでたっても『最下位』だってことをね…。


龍馬、真哉、沙織、そして総魔。


私はみんなに勝てないままで、この先何年経ってもみんなの下にいると思う。


それが悔しいって思う気持ちがあるのよ。


今よりも強くなって少しでもみんなに近付けるのなら。


私は今の力を捨てることを迷わない。


そしてもしも新たな力を手に入れることが出来るのなら。


私は新たな道を進むことを迷わないわ。


そんなふうに心に決めて、理事長と向き合ったの。


だから、かな。


理事長は私の決意を感じ取ってくれたみたい。


総魔に渡した指輪と同じ物をポケットから取り出してくれたのよ。


「そんなに幾つも持ってきてないのよ。だから今はこれが最後よ」


最後の指輪を差し出してくれたわ。


その指輪を受け取ってからすぐに左手の人差し指にはめてみる。


総魔の指に合わせていたなら指輪の大きさが合わないんじゃないかな?って思ったりしたけど。


実際にはめてみたら自然と大きさが変わったような気がしたわね。


多分、自動的に調整される機能でもあるんじゃないかな?


魔術的な道具だし。


そういう機能があっても不思議じゃないと思うわ。


でも…。


指輪を貰ってみたものの。


何を封印すればいいのかな?


具体的なことがよく分からないのよね…。


私の力って何なの?


自分でもよくわからない。


だけど、何となく思い付くことはあるわ。


私が封印するのは『光』かな?


たぶんそれが私の能力だと思うからよ。


光を封印すればルーン『パルティア』は使えなくなるはず。


当然、光に属する魔術も使えなくなると思うけど。


私が自信を持って使える力ってそれしかないと思うのよね。


だから純粋に『光』なんだと思う。


もしも間違ってたら笑えないんだけど。


違ったら違ったでやり直せばいいんじゃないかな?


指輪自体は何度でも使えるはずだし。


違ったなら別の能力を封印すればいいと思う。


そう考えた私は思いきって封印してみることにしたわ。


左手の指輪に視線を向ける。


そして指輪に願いを込めてみる。


小さな輝きを発した指輪。


その直後に私の体から何かが失われるような気がしたのよ。


だけど私自身に変化はないと思う。


なのに。


明らかに何かが違う気がするのよ。


これが力を失った感覚なのかな?


じっと指輪を見つめながら力を発動させようとしてみる。


ルーンの発動…は、失敗。


何も起きなかったわ。


いつもなら瞬時に発動するはずなのに。


この手に馴染んだ『パルティア』が使えなくなっていたのよ。


ついでに他の魔術も確認してみる。


思い浮かぶ限りの魔術を展開してみたわ。


もちろん発動はさせないわよ?


危ないしね。


だから展開と停止だけの作業を繰り返したわ。


その結果として答えはすぐに出る。


私が習得しているほぼ全ての魔術は通常通り発動出来るのに、

全く使えなくなった魔術があったからよ。


それはもちろん『光』の魔術。


唯一得意としていた魔術なのに、その全てが何の反応も示さないの。


発動に失敗したとかそういう感じじゃなくて、

そもそも反応しないっていう感じね。


存在そのものが否定されてるように感じたわ。


完全に封印されてしまった光魔術。


総魔と同じように、私も力を失ったみたい。


これで良かったのかな?


再び指輪に視線を向けてみる。


この小さな指輪にどんな効果があるのかよく分からないけれど。


確かに私は力を使えなくなったようね。


一応、指輪を外せば力は戻るみたいだけど外すつもりはこれっぽっちもないわ。


…と言うよりも。


力を失ったことに対して、少しだけ喜びを感じてたかも。


理由は予想が間違ってなかったからなんだけど。


これで私もやり直すことが出来るからよ。


ここで頑張ればみんなに追いつくことが出来るかもしれないのよ。


それを思えば一時的に弱くなるくらい全然気にならないわ。


むしろ今まで以上に頑張ろうって思えるかな。


だから私は指輪を強く握りしめながら理事長に視線を向けて頭を下げたの。


そして精一杯のお礼を言ったのよ。


「ありがとうございます!」


「う~ん。別に感謝されるようなことでもないんだけどね…。」


戸惑う理事長だけど、

私としては感謝する価値のある出来事だからこれで良かったと思うわ。


「ふふ~ん♪」


全力で微笑みながら総魔に振り返ってみる。


「これで私もやり直し、かな?」


「ああ、そうだな」


微笑む私を見ていた総魔が一瞬だったけど笑ってくれたのよ。


…うわぁ~。


総魔の笑顔を見ただけでドキッとしちゃったわ。


今までなら微笑むことはあっても、笑顔を見せてくれたことは一度もなかったのよ?


それなのに、ちゃんと笑ってくれたの。


その笑顔をばっちり見ちゃったのよ!


初めて総魔の笑顔を見れたことで、ただそれだけのことですごく嬉しい気持ちになれたわ。


まあ、恥ずかしいからそんなことは言えないけどね。


「むぅ~。何で笑うのよ?」


照れ隠しでちょっぴり反論してみる。


だけど自然と私も笑顔を浮かべてたと思う。


って言うか、にやけてる?そんな感じ。


そんな私の頭に手を置いた総魔は笑顔を浮かべたまま優しく撫でてくれたわ。


えへへへ~。


ちょっと嬉しいかも。


それに、ね。


「頑張ってみればいい」


総魔が応援してくれたのよ。


ただそれだけで俄然やる気が沸いてくるわ。


自分でも単純だと思うけれど、これで良かったんだって自信が持てたからよ。


それだけで十分幸せを感じられたの。


そんな幸せオーラを放つ私の手を、沙織がそっと握りしめてくれたわ。


「ん?」


どうしたのかな?って思って沙織に振り向いてみると。


沙織はいつも以上に優しい笑顔を浮かべながら微笑んでくれてた。


「頑張ってね。翔子」


沙織も私を応援してくれたのよ。


ただそれだけのことなのに。


何故か今日が人生最高の一日だと思ってしまえるくらい幸せに思えたわ。


それぐらい嬉しい一言だったの。


「うん。私も頑張る!ありがとう、沙織♪」


お礼を言ってから沙織を抱きしめてみる。


少し恥ずかしそうに照れる沙織だけど、

そんなことを気にせずに私は沙織を強く抱きしめ続けたわ。


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