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一文
《サイド:米倉美由紀》
………。
どうも気に入らないわね。
大悟の宣言を聞いてもまだ信じられないと思う気持ちがあるのよ。
疑うっていうほどではないかもしれないけど、
超音波という間接的な理論が納得できないって思ってしまったのよ。
『直接魔術によって影響を及ぼすのではないために回避は不可能』と書かれた一文。
そこに視線を止めながら大悟に尋ねてみる。
「実際の性能を見てみたいわね」
「それなら現在も研究所で実験を続けているはずだ。見に来るか?」
「ええ、そうね」
少し険しい表情で返事をしてしまったわ。
大悟の報告を疑っているわけではないけれど、
それでも何故急に魔術の理論が大幅に書き換えられたのか?という部分に疑問を感じてしまうからよ。
今朝の天城総魔と北条真哉との試合において使用された理論とは全くの別物になっていたわ。
どうしてもそこに疑問を感じてしまうのよね。
「一つ。聞いてもいいかしら?」
「あ、ああ」
「何故、理論の変更を行ったの?」
「………。」
私の一言によって大悟の心臓の鼓動が一気に加速したように思えたわ。




