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本人の意向
《サイド:天城総魔》
ほう。
潜んでいたのか…。
今まで気づかなかったが、扉の向こうで待機していたようだ。
聞き覚えのある女性の声は西園寺だったと思う。
彼女は黒柳の指示を受けてから即座に実験の準備の為に部屋の前から離れて行った。
「護衛として配置していたのか?」
俺が不穏な動きを見せた瞬間に身柄を抑えるつもりだったのかを問いかけてみると、
黒柳は小さく笑いながら否定した。
「いや、そんなつもりはない。おそらく西園寺君なりに俺の身を心配してくれていたのだろう。君は彼女にかなり警戒されているからな。俺の身を守るつもりで待機していたのだと思う。少し前から扉の向こうに潜んでいるのは気づいていたが、だからと言って追い払うほどの理由はないからな。好きにさせていただけだ。」
西園寺が潜んでいたのは黒柳の指示ではなくて本人の意向のようだ。
「まあ、結果的に話が早く進んで問題はないだろう。西園寺君が動いているならすぐに準備は整うはずだからな。だがその前に、君の話を聞いてもいいか?」
「ああ。問題ない」
短く返事を返したあとで、新たな理論を説明し始めることにした。




