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THE WORLD  作者: SEASONS
4月2日
15/4820

色分け

そして次にたどり着いたのは第11検定試験会場だ。


先程初戦を行った検定会場の隣にある二つ目の会場になる。


隣と言っても会場と会場の間には数百メートルもの距離があるので実際には離れた場所と表現すべきなのかもしれないが見渡せる範囲内において二つの会場の間には他に建築物といえるものは何もない。


丁寧に敷き詰められた石畳の道があるだけで他に目印となるような類いは何もない。


移動の距離さえ気にしなければ隣同士と言えるだろう。


ただその距離感だけを考えると広すぎる敷地を無駄にしているようにも思えるものの。


実際に検定会場で行う実践形式での魔術による試合を考慮すれば会場周辺に余分な建物を建てないのは当然の判断だとも思う。


検定試験の最中に打ち出された魔術が万が一にも会場の防壁を突き抜けて外へ漏れてしまった場合。


魔術の破壊力によって着弾地域周辺は炎上するか足の踏み場もないような壊滅状態に陥ってしまうだろう。


少なくとも会場の防壁を突き抜けるほどの高威力ならば地面が荒れる程度ではすまないはずだ。


その辺りの危険性を考慮した結果が各施設ごとの余裕をもった距離ということになるのだろう。


安全を考慮した結果として学園内の敷地の半数以上がただの空き地になっているというのはさすがにどうかと思ってしまうものの。


実際に問題が起きた場合に責任をとらされるのは学園側だ。


十分と判断できる範囲以上の余裕を考慮したくなる気持ちは分からないでもない。


下手に怪我人でも出れば過失責任を問われる可能性があるからな。


むしろ怪我人程度であればまだましだが、

何らかの事情で死者が出てしまった場合は学園の責任者が軒並み断罪されかねない。


そういう政治的な問題もあることを考えれば安全に安全を重ね続けている学園の方針を馬鹿にすることはできないだろう。


無駄な土地が多いことは事実だが、

だからこそ規模の大きさを誇ることもできる。


安全と無駄。


その二つを両立させた結果が現在の学園の形であり、

施設を密集させて得られる効率よりも施設を分散させて得られる安全を選ぶことで長期的な運営を目的としているのだろう。


学園としては当然の判断と言える。


他の町にある学園がどうしているのかは知らない。


自分の目で確認したわけではないからな。


どういう方針で動いているのか現時点では分からない。


だが少なくともジェノス魔導学園は効率よりも安全を重視する傾向にあるのは間違いなさそうだ。


だからと言って油断できるような生ぬるい雰囲気ではないだろう。


校舎の中庭を離れてから二つ目の検定会場にたどり着くまでの間にも追跡してくる人物がいる気配はしっかりと感じ取れている。


これまでの推測をもとに考えれば、

効率よりも安全を重視して距離をとっているということだろう。


学園の方針を重視すればそう考えるべきだと思う。


だがそれだけで得られる情報などたかが知れているので接触する機会を窺っている可能性も十分にある。


もう少し泳がせて様子を見るべきだろうか?


その気になれば監視者をあぶり出すのは難しくない。


そうしないのは気付いていない振りをすることで相手の油断を誘うことができるからだ。


相手をおびき寄せるのはもう少し判断材料が揃ってからでいいだろう。


監視者に関してはそう判断して思考を打ちきって再び目の前の光景に意識を移す。


目の前にそびえ立つ検定会場そのものの造りは先程の会場と全く同じであり、

特に違いとなるような差異は感じられない。


強いて違いを探すとすればそれは会場というよりも所属している生徒達の学年だろうか?


二つ目となる検定会場の入り口付近には今も数多くの生徒達が集まっているのだが、

そこに集まっているのは昨年入学した生徒達だけではなくてそれ以前から入学していたであろう上級生達の姿も見受けられる。


それほど数が多いわけではないものの。


2年前かあるいは3年前に入学したと思われる生徒達の姿も確認できた。


まだ入学したばかりなので各学年の正確な順番までは覚えきれていないが、

各年毎に制服の特定の箇所が色分けされているので各生徒達の学年は簡単に見分けられる。


男子であればネクタイ。

女子であればリボン。


そして男女ともに生徒手帳も色分けされている。


学園に何年所属しているかということよりも純粋な成績が重要となるこの学園では先輩と後輩という考え方があまり意味をなしていないのだが。


それでも制服の色の違いを見分けることで学園に何年所属しているのかが分かるようにはなっている。


だからこそ言えるのだが見える範囲内において新入生の姿は見当たらない。


ここは先程の会場よりも上位の検定会場になるとはいえ、

たった一つだけ格上となるだけの会場なので少しくらいは他の新入生も試合の挑戦を行ないにきているのではないかと考えていたのだが、

軽い予想に反して新入生組はまだ誰もこちらの会場へは来ていないようだ。


つまり、この会場にいるのは全員が上級生ということだ。


見える範囲にいないだけなのか?


それとも本当にいないのかは受付で確認してみないと分からないものの。


一つだけ確かなことがある。


ゆっくりと周囲の様子を窺っているこの瞬間もまだ監視者が近くにいるということだ。


やはりここでの試合も観戦するつもりなのだろう。


監視するほどの価値があるのかどうかは実際に試合をしてみなければ分からない。


監視者からすれば各会場の知識があるのである程度の推測を立てられるのかもしれないが、

こちらとしては未知の領域なので試合内容の推測はできない。


単純に考えて先程の会場とそれほど差がないようであれば見る価値のない試合なのは間違いないだろう。


同じであれば、だがな。


そうでないことを願いたい。


先程の会場よりも優秀な生徒がいることを期待しながら入り口付近にいる会場の係員に歩み寄ってひとまずここでの情報を尋ねてみることにした。


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