『アレ』
《サイド:芹澤里沙》
学園の校舎前で、
周囲を取り囲む生徒達に淳弥が話し始めてた。
「まあ、とりあえずだな…。大人しく投降するなら痛い思いをしなくて済むと思うんだが、どうする?」
100人くらいの生徒が私達を取り囲んでるんだけど。
「好きにしろ…」
誰かの言葉がきっかけとなって驚くほどあっさりと戦闘が終了してしまったわ。
「俺ももういい…」
「暴れるだけ無駄だしな」
誰一人として抵抗の意思を見せる様子がないまま、
素直に淳弥の意見を受け入れていたのよ。
…う~ん。
良く分からないけれど。
諦めに思える発言を続ける生徒達は何故か百花に怯えるような視線を向けていたわ。
…何があったのかしら?
ここで何があったのか知らないけれど。
何故か木戸君と須玉さんまで百花から視線を逸らしているように見えるのよね。
…桃花を避けてる感じ?
良く分からない状況だったわ。
それでも淳弥は生徒達に指示を出してく。
「全員、生徒指導室に戻ってもらうぞ。一応言っておくが、逃げようなんて思うなよ?下手な抵抗を見せたら『アレ』を送り込むからな」
…アレって何?
意味が分からないけれど。
長野淳弥は百花を指差してる。
その指先を視線で追った生徒達は表情を歪めていたわ。
…なのに。
百花は私を見つめたまま微笑んでいて、
淳弥達の行動を気にしてないようなのよね~。
「ねえ、百花。何があったの?」
「…さあ?何でしょうね?」
極々自然に首を傾げる百花は、
とぼけているというよりも気にしてないように思えたわ。
…ん~。
…まあ、何でも良いけどね。
「それよりも怪我はしてない?大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。心配いらないわ」
その場でくるりと一回転して見せた桃花は本当にかすり傷一つないみたい。
「それよりもね」
何故か百花が急に私の体を抱きしめてくれたのよ。
「里沙が無事ならそれで良いの」
…ん?
…私が無事なら?
「そうなの?」
「ええ、そうよ」
微笑み続ける百花の考えは私にも良く分からないけれど。
追求しても無駄っぽいことは何となく理解できたわ。
「まあいっか…」
小さく呟いてから淳弥に視線を戻してみると。
すでに淳弥は木戸君と須玉さんを呼び寄せて、
周囲の生徒達を生徒指導室に連行しようとしているところだったわ。




