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THE WORLD  作者: SEASONS
4月5日
133/4820

鉄の掟

《サイド:美袋翔子》


「すまないが、美袋君と常磐君は少しここで待ってくれないかな」


黒柳所長に呼び止められてしまったことで私達は足を止めることになってしまったわ。


それなのに。


総魔は私達を気にする事なく試合場に向かって行ってしまう。


あ~もう。


置いていかないでよ~。


呼び止めたいけど、

黒柳所長が邪魔するせいで声をかけられる雰囲気じゃないのよね…。


うう~。


全然私達を気にしてくれない総魔の後ろ姿から視線をそらして、

道を塞ぐ黒柳所長に向き直ってみる。


「一体、何を企んでいるんですか?」


どう考えても何かあるわよね?


そう思って聞いてみたんだけど、

黒柳所長は教えてくれないみたい。


「いや、企むと言うほどの事ではないな。それに君が思うような心配はなにもない。今回の実験の目的は一瞬で終わるからな。その後は自由にしてもらうつもりだ」


実験?


総魔には告げなかったけれど、

何らかの実験を行うつもりでいるようね。


そのあとは自由にしていいって言ってるけど、

何の実験をするつもりなのかは教えてくれないみたい。


う~ん。


何をしようとしてるのかな?


理事長から離反した私達は何も知らないのよね~。


だから余計に不安を感じてしまうわ。


「どういうことだと思う?」


「さあ、私にも分からないけれど、だけど私達が近くにいると不都合な実験なのは間違いないでしょうね」


やっぱりそういうことよね。


私と同じで何も知らない沙織も不安を感じてるみたいだけど。


黒柳所長が答えてくれる雰囲気は全くないし。


それどころか本気で私達を排除しようとしているようにさえ思えたわ。


笑顔の奥から感じられる気配が明らかに戦闘を考慮しているように感じられるからよ。


こうなるともう動けないわ…。


黒柳所長には勝てないからよ。


生徒としてなら私も沙織も間違いなく最上位だと思う。


総魔に負けたことで番号が下がったとは言え、

私達の実力は学園の教師達でさえ黙って道を開けるほどだしね。


だけど、ね。


それほどの実力があっても、絶対に勝てない相手はいるのよ。


目の前にいる黒柳所長もその一人ね。


かつて国内最強の魔術師と言われた米倉宗一郎元代表を師として仰ぐ黒柳所長の実力は、国内において10本の指に数えられるほどの天才魔術師って言われているわ。


学園内では頂点を競い合う私や沙織でも黒柳所長が相手だと手も足も出ないくらい実力に差があるのよ。


そのことを私達は十分すぎるくらい理解してる。


黒柳所長と理事長にだけは勝てないから。


この二人だけは絶対に敵に回してはいけないのよ。


それがこの学園の鉄の掟で、

その掟を破ろうものなら容赦ない制裁が待ってるわ。


そのことも私と沙織は知ってる。


これまでの学園生活で何度も見てきたしね。


黒柳所長と理事長の圧倒的な実力を何度も確認してきたのよ。


だから目の前にいる黒柳所長と争うことはできないわ。


戦いを挑んでも敗北するのは目に見えてるからよ。


いろいろと気になるけど、今は大人しくするしかないみたい。


そんなふうに考えながら隣にいてくれる沙織に視線を向けてみると…。


「………。」


沙織も同じことを考えてたんじゃないかな?


ただ静かに頷いてから大人しく後退し始めたわ。


うぅ~。


何だか納得できない部分があるけど。


「まあ、仕方がないわね」


試合場には近づけないのよ。


その現実に直面した私達は黒柳所長が道を開けてくれるのを素直に待つことにしたわ。


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