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THE WORLD  作者: SEASONS
4月4日
116/4820

不発

《サイド:天城総魔》


ほう、アルテマが消えたか。


アルテマを発動するために大量の魔力を消費していたのだが、

必殺の一撃は不発に終わってしまったようだ。


沙織の決死の努力がアルテマを相殺しきったからな。


俺の攻撃は失敗だ。


…とはいえ。


だからといって、これで終わりというわけではない。


その気になればもう一度アルテマを放てる程度の魔力はあるからな。


もう一度攻撃を仕掛ければ、

今度は耐える暇もなく吹き飛ぶだろう。


まだその程度の余力は残しているのだが、

対する沙織にはもはや余力が感じられない。


息も切れ切れに何度も深呼吸を繰り返している姿を見れば限界が近いのは一目瞭然だった。


今の沙織が相手なら、

アルテマどころか下位の魔術でさえも防げるとは思えない状況だ。


そこまで弱っているように見える。


「アルテマを防ぎ切った努力は認めるが、どうやらそこまでのようだな」


俺にとってはたった一発の魔術だが。


アルテマを相殺する為に消費した沙織の魔力は残存魔力のおよそ6割に達していただろう。


序盤の猛攻も考えれば魔力の保有量はかなり低下していると思われる。


多く見積もっても3割程度の魔力が残っていれば良いほうだろう。


次にもう一度アルテマを使えば今度は相殺仕切れないはずだ。


「………。」


何も答えない沙織だが、

焦っていることは表情からありありと見て取れる。


すでに敗北を実感しているのだろうか?


これ以上の抵抗は無駄だと考えているのかもしれない。


そんな沙織の姿を眺めながら、再び歩み寄ってみる。


「どうする?ここで諦めるか?」


まだ続行する意思があるかどうかを問いかけてみると、

沙織は真っ青な表情を見せて俯いてしまった。


現時点ですでに実力の差を感じてしまっているのだろう。


だが。


決定的な魔力の差を実感しながらも、

沙織に諦めるつもりはないようだ。


もしかしたら残された魔力に限りはあるが、

それはどちらも同じだと思っているのかもしれない。


敗北を認める様子のない沙織は両手で杖を構え直してから再び顔を上げた。


もちろん物理的に殴り合う為…ではないだろう。


そもそも試合中に物理攻撃は意味をなさないからな。


結界の作用によって無効化されてしまうだけだ。


まともに戦えば勝ち目はない。


攻撃は届かず、防御も叶わない。


それでも沙織は諦めなかったようだ。


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