願わくば
《サイド:米倉美由紀》
はあ…。
沙織と翔子は行ってしまったわね。
「あなたはどうするの?」
最後に残った北条君に問いかけてみたんだけど。
「さあ…な」
北条君はあやふやな返事だけを残して二人の後を追って歩きだしたわ。
その結果として。
室内には私だけが残されてしまったわね。
「はあ…。」
ため息が止まらないわ。
疲れを吐き出すかのような深いため息を何度も何度も繰り返してしまう。
他には誰もいない室内。
一人きりになってしまった私は椅子に腰を下ろしてから頭を抱え込んだわ。
「対策を…」
小さく呟いてみるものの。
前途が多難すぎるわね。
天城総魔と学園最上位の翔子達。
彼らに対抗する手駒を用意するとなるとどう考えても釣り合わないのよ。
彼我の戦力に差がありすぎるわ。
もはや学園の総力なんて言ってる場合でもないでしょうね。
そもそも学園を二つに割るような抗争でも起きようものならその時点でこの国の未来は迷走してしまうのよ。
管理できない力存在するなんて情報が表沙汰になれば、
これまでの外交の努力が全て水泡に帰すことになるわ。
本当の本当に。
緊急事態にならないことをただただ祈るしかない状況と言えるわね。
入学式の時には気楽な態度でいたけれど、
まさかこんなことになるなんて思わなかったのよ。
だけど今となってはこの学園の運命は天城総魔の気持ちに左右されてしまうようなそんな状況にまで来てしまっているわ。
「願わくば味方であってほしいものね」
心の底から願う私の気持ちなんて関係ないまま。
時計の針が午後6時を示そうとしているわね。
第1検定試験会場において。
天城総魔と沙織の試合が、まもなく始まろうとしているのよ。




