容体
御堂先輩の着替えを終えたあとで、
私達の作業が終わるのとほぼ同時に医務室の扉が開かれたわ。
「夜分遅くに失礼する」
挨拶をしながら医務室に入ってきたのは米倉元代表さんのようね。
学園の元理事長でもあるんだけど。
行方不明になった米倉美由紀代表のお父さんの米倉宗一郎さんよ。
「御堂君の容態はどうだ?」
「診察の結果、魔力を失った影響で昏倒していると思われます」
眠る先輩に歩み寄りながら問い掛けてくる米倉元代表に、
校医の先生が即座に答えていたわ。
「現時点ではそれ以外の問題は特に見られませんので、魔力の回復による目覚めを待つしかないと思います」
「…そうか。」
特に心配する必要はないっていう説明を受けたからかな?
米倉元代表はほっと安堵の息を吐いていたわ。
「ひとまず生存者がいたことは喜ばしい限りだ」
…確かに。
誰も見つからないという状況が続くよりも、
誰か一人でも見つかったほうが前向きに頑張れるしね。
個人的には翔子や天城君も見つかるといいんだけど。
その辺りも含めて御堂先輩から話が聞けるかもしれないから、
知り合いが見つかったのはすごくありがたい状況だと思うわ。
たぶん、米倉元代表もそう思ってるんじゃないかな?
眠り続ける先輩の表情を少しだけ眺めていた米倉元代表は、
無理に先輩を起こそうとはせずにベッドから離れたわ。
「彼が目覚めたら連絡をくれ」
「はい。分かりました」
指示を残してから医務室を去る米倉元代表の後ろ姿を見送ると、
入れ替わるかのようにすぐに数名の生徒がやって来たわ。




