絶望という名の壁
『ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!!』と、
突如として鳴り響いた轟音と共に、
地下室が激しい地震に襲われて急激に揺れ始めた。
この振動は王都で兵器が発動した時に匹敵する勢いの地震かもしれない。
おそらくこれが32の兵器の振動による最初の余波なのだろう。
「そ、総魔さんっ!?」
「…ああ。」
突然の揺れに戸惑って倒れそうになる優奈の体を抱き寄せながら龍脈の調査を続行していく。
「間違いなく、この地震は兵器の発動の予兆だろう。兵器が一つであれば、ここまでの揺れは起きなかったかもしれないが、32の兵器によってこの地にも地震が発生していると考えるべきだ。こうなるともう発動まで時間がない。兵器への干渉を急ぐぞ!」
「…は、はいっ」
再び龍脈に意識を向ける俺の腕に抱かれながら、
優奈も兵器への干渉を再開してくれた。
「最期まで頑張ります!」
「ああ」
吸収を再開した優奈をしっかりと抱きしめながら、
俺も龍脈の流れを探り続けていく。
…だが。
どう考えても間に合わない。
32の兵器の全ての流れは把握しきれない。
残された時間は不明だが、
幾つかの流れを把握するだけで精一杯だろう。
全てには届かない。
時間が少なすぎるからだ。
せめて…
せめてもう少し余裕があれば…。
あるいは兵器が一つだったなら…。
心の中で焦りが募るが、時間は待ってくれない。
ここまで来て間に合わないのだろうか?
限られた時間。
残された僅かな時間では俺の対応出来る範囲を越えてしまっている。
これが世界の力なのだろうか?
一人の力ではどうにもならない現実。
傍に優奈がいてくれるとはいえ、
優奈も兵器の稼動を先伸ばしにするだけで手一杯の状況だ。
兵器を操作する為の戦力には期待出来ない。
仮に御堂がここにいたとしても、
兵器への干渉は出来ないだろう。
兵器に干渉出来るのは俺と優奈だけだ。
それなのに俺達が揃ってもどうにもならない問題。
兵器が一つだけだったら止められたはずの力だが、
32の兵器は数が多過ぎる。
…これが、絶望だろうか。
諦めにも似た心境で龍脈と向き合ってみる。
「ここに来るのが遅すぎたか…」
もう兵器は阻止できない。
共和国の滅亡を回避することができない。
時間という限界に追い詰められてしまい。
これ以上の干渉は意味がないと考え始めてしまった俺の感覚が…
直感とも言える感覚が…
不意に忘れることの出来ない『心』を感じとっていた。
…これは、何だ?
…なぜ、今ここで?
決して忘れてはいけない心。
絶対に忘れることの出来ない心。
それは大切な『想い』
龍脈に流れる仲間達の『想い』を…
俺は無意識のうちに感じとっていた。




