部活設立(仮)
「……おい、早瀬。早瀬!」
担任の先生が俺の名前を呼ぶが今はそれどころじゃない。チャイムが鳴ったら一刻も早く職員室へ向かう。その為にすぐ出ていけるようにスタンバっている。
「…なんですか」
「部活の話、聞いたぞ。あのなぁー…もう少し余裕を持っても大丈夫なんだぞ」
キーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴ると同時に勢いよく立ち上がる。
先生は驚いてるけど関係ない。
そのまま俺は教室を飛び出した。
「どけどけどけぇーーい!」
今日は待ちに待った日なのだ。
帰りのHRをわざわざ待つような時間も我慢力も俺には無い。
やっと着いた職員室。
乱れた息を整えてから勢いよくドアを開ける。
中に居た先生達は皆、驚いてたが俺は用事のある先生を探す。
「……あれ、田中先生は?」
職員室を見渡しても目当ての先生は居ない。
田中先生は高齢だ。もしかして心臓発作で倒れ、救急車で運ばれたんじゃ!?
「田中先生に用かい? 田中先生はまだクラスでHR中じゃないかな」
「なっ!しまった…」
いくら俺が早く来てもクラス持ちである田中先生がまだじゃ意味がない。
「……くそぉ」
「バカ。先生から呼び出しされたよ」
現れたのは幼馴染みの凪雲 日和だ。
艶のある黒髪をポニーテイルにしている。ほっそりしてるが胸は無い。だが不思議とクラスの連中にモテる。そんな日和とは家が近所という理由からよく遊んだものだ。
「くぅー! 先生から呼び出し食らうし、日和にバカにされるし最悪だ」
「私だって付き合わされる身にもなって欲しいよ。全く……それで、あんなに急いで何するつもり?」
日和は俺の顔を覗きこむようにして話し掛ける。こういう仕草に悔しいけどドキッとしてしまう。
「……今日、部活作る為に田中先生に書類審査して貰ってたの。そういう日和は?」
「えっ!……わ、私はまた悠心が職員室に呼び出されたのかと思って来ただけだよ」
怪しい。
何故か顔を赤くさせ、もじもじしながら話す。これじゃ、告白みたいじゃないか。
「…んだよ。部活作る事、伊吹から聞いてないのか?」
「へっ?あ、うん。ほら、伊吹君ってミステリアスだからあんまり喋ってないの」
ふーん。ミステリアスね。
伊吹ってミステリアスか?無駄にイケメンで無駄に頭脳明晰な奴だろ。
「そういう伊吹はどこ行ったんだ?」
「さぁ。私は悠心と違ってちゃんとHR終わってから出てきたから……その時にはまだ居たけど」
あいつ、何考えてんのか分かんないよな。
そういう所がミステリアスなのか。
「そうか」
「……ねぇ、さっき部活作るって言ったけどさ。どんな部活なの?」
「ん? 俺のこの眼を使って心霊関係の謎を解決する、つまり『心霊探偵部』だ」
へへん、どうだ。
これで日和も入りたくなっただろ。
「……ハァ」
ん?
なんでため息なんだよ!