1ゲーム目-2
1ゲーム目-2
____________________一人の少年はゲームへの参加を決心した。
この世が虚無の世界と果して、偽りの世界との間で苦しみもがくその少年。
夢に囚われることを嫌ったその少年。
だがしかし、そのまま夢に縛られていた方が良かったかもしれないね?
その方が彼にとって、良かったかもしれないね?
「死んではいない」彼にとって、「生きている」を望むことはとても無茶なことだった。
その無茶を乗り越えるか乗り越えられないかは彼自身の問題であるわけだし、僕に彼を止める権利はない。
いや、停める、と言うべきか…
結果が楽しみだね。
…これだから、このゲームはやめられない。
彼の怪しい笑みに気づく者はだれもいなかった。
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俺はゲームの大会の場所へと向かっている最中であった。
電車の窓から眺める景色はすごい速さで移り変わって行く。まるで俺の今までの人生みたいだ。
電車に乗ったのは2、3年ぶりか…。
やけに昔のことだったように感じた。
電車には乗りたくない。
あの頃を思い出す。
君は、俺をいつも元気づけてくれたね。よく励ましてくれたね。
いつも俺の手を引っ張って、「自分」を見つけさせてくれたね。
俺が泣いた時は君もなんか泣いてくれてたっけ。
昔のことを思い出している内に、
あ、もう降りないと。
電車から降りようとしたその時、
『__やっと、だね』
耳元で、ふっと聴こえた。
「⁈」
聞き間違え…か?
確かにソレはあの子の声だった。
ついに幻聴まで聞こえるほど俺はおかしくなっちまったのか…。やばいな。
そう思いながら、駅を後にし、ゲーム会場へ向かった。
ゲーム会場にはたくさんの人が来ている。
…かと思っていた。
だが、現実はまったく違ったらしい。
ゲーム会場というのもこれはまた古びた別荘、といった感じで、まるでそんな望みを叶えるなんて言った夢じみたロマンがあるといったような場所ではない。
おそるおそるゲーム会場の扉を開く。
「ゲーム参加の方ですね?」
「ふぁ⁈は、はいっ」
あまりにも急に聞かれたので間抜けな声が出てしまった。
「こちらの番号のお部屋でお待ちください。」
そういってスタッフらしき人から、ルームキーをもらった。
ひとりひとりに部屋がついているのか。
これは嬉しい。
最近全く人と喋っていなかったため、人とコミュニケーションをとるのが少し苦手だったのだ。
優勝の褒美が驚愕だったために、ゲームも大がかりだと思っていたのだが…
俺は別荘の中を少し散策しながら、考えていた。
あ、ここからは客室のようだ。
俺のルームキーの番号は、3だった。
3と書かれたドアの鍵穴に持っていたルームキーを通す。
…ガチャ
開いた。ここで合っているようだ。
他に数字が書かれたドアの部屋は9つあった。今まで別荘を散策してきたが、このように数字が書かれたドアがあったのはここしかかった。つまり、ゲーム参加者は10人以下である、ということが予測できる。
俺が違う場所にある部屋を見落としている、ということもあるが、この別荘の広さから考えて、そんなに参加者は多くはないだろう。
どんなゲームが行われるのか…?
いくら考えたってそんなのはわからない。
次は、部屋の中を見てみよう。
俺は部屋に入り、もしも襲われたら危険なので、かぎを閉めて、部屋の中を見て回ることにした。