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生きる意味

「首を捧げに来たぞ!」


 早姫は敵の屋敷に来ていた。


「来たのか。てっきり逃げたのかと思った」


「大将だけが残った時点で逃げたのと変わらん」


 早姫が膝をつく。


「あの面が代わりかと思っていたよ」


「嫌みか」


「相手が女だと知ったからな。殺すのが惜しくなったのだ」


「ご託はいい、殺せ」


「情は無用、か」


 敵大将は、早姫を見つめる。


「我の妻にならんか?」


「何を考えている!?」


「男が女に惚れるのに理由が要るか?」


「……殺せ、仲間に会いにいく」


「ならん。我の妻に迎える」


「戦場を経験した以上、人並みの幸せは叶わぬと思ってきた!」


「死ぬだけが敗者のケジメと思ったら大間違いもいいところだ!!」


 敵大将が反した。


「我とて、そなたの攻撃で多くの仲間を失った! もう二七も歳を重ねたが、女ひとり抱いたことなど無い。恋文を書いたことも、受け取ったことも無い。だが、死を覚悟したことはあっても、死にたいとは思ったことなど無い!!」


「私は!」


「そなたも人並みに誰かを愛し、家族を持ち、見守られて死んでいく。嫌ではなかろう」


「う……うぅ……」


 早姫は涙を流した。


「仲間への敬意は死ぬことだけではない。敵への捧げは首だけではない。生き残ることで仲間への感謝になり、敵へ屈辱を与えることもある。何よりも帰りを待っている人達にとって、最高の褒美なのだ」


 敵大将は早姫を抱き締めた。


※ ※ ※


「早姫さん!!」


「お前たち!?」


「跡を追ったら、辿り着いた」


 夏郷と破耶が、疲れながらも安堵した。


「すまなかった。心配をかけたようだ」


「生きててくれて良かった!」


「そなたの友人か?」


「あんたは?」


「早姫殿の敵だったものさ」


「気のせいかな。敵だったとは思えない」


「嬉しいよ」


「彼の名はそう、私と添い遂げる人だ」


「えー!?」


 夏郷が声をあげた。


「失礼だぞ夏郷!」


「まあ、簡単に話すとな」


※ ※ ※


「宗さん、素敵です」


 破耶が目を輝かせる。


「そうかな」


「戦は、どうするんです?」


 夏郷が宗に訊いた。


「戦の意味は、権力者への示しだった。そうすれば我々を支援している権力者は力を示すことができたのだ。だが支援は、もう要らない」


「どうするんです」


「生き残った仲間には帰るように言った。我に付いていくという者もいたが断ったよ。これからは、早姫殿と共に静かな処で暮らしていくさ」


「御幸せに、絶対になってください!!」


「その言葉、そのまま返そう」


「は、はい!」


 破耶は顔を赤らめた。


※ ※ ※


「うーん」


 生徒会・広報の矢島 かなが考えていた。


「どうしたの?」


「声がしたんですよ」


「誰の?」


「夏郷くんと破耶ちゃんの」


「何処から聞こえたの!」


「えーと……屋上」


「屋上!?」


 千景と奏は屋上へと向かった。


※ ※ ※


「屋敷をやろう」


「朝から何を言ってるんだ!?」


「私には、もう要らないからな。お前たちになら無償で譲っても良いと思ってな!」


「俺たちだって貰っても!?」


「屋敷にかかる費用は私と宗殿で払う。心配は要らんよ」


「わたし達も、いつまで居るのか」


「住んでもらうなら二人しかいないと思っただけさ。鎧等を置いとくには丁度いいと思っているよ」


「宗さんの屋敷は?」


「欲しい者がいてな。言い値で譲ることになったよ」


 早姫が馬に乗る。


「元の世界に帰るときに挨拶は要らん、ただ、手紙を一筆書いて送ってほしい。無理とは言わんがな……達者でな!!」


「はい、御元気で!」


「幸せにな!」


 早姫は、颯爽と駆けていった。


「行っちまったな」


「ああ、寂しいぞ」


 二人の身体を光が包み込む。


「これは!?」


「戻るのか、夏郷! 手紙を書いてないぞ!」


 慌ただしく墨と紙を用意して二人は手紙を書いた。


「済まぬが手紙を届けてほしい! 場所は……」


 偶然通りかかった配達人に手紙を渡した。


「消えるんだな、この世界から」


「わたし達の想いは消えないぞ」


 二人が手を繋ぐ。視界に広がるのは見慣れた場所だった。

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