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戦場の姫

 夏郷かざと破耶はや

 高校の屋上に居たはずの男女の高校生は、炎と風と砂が舞い上がる戦場に飛ばされていた。


「夏郷、これは!?」


「俺にはサッパリだ」


「その格好。敵か!」


「ちっ……違う! 俺たちは、少なくとも貴女の敵じゃない!」


 一緒に破耶も頷く。


「敵ではない証を見せろ」


 その者は小刀を夏郷に渡す。


「まだ虫の息とはいえ生きている、殺すんだ」


「!?」


「何を言っておる! むしろ、まだ生きているなら救わぬか!」


「娘……そなた、死にたいか?」


 その者の目付きが鋭く獲物を見るように変わる。


「アンタ!」


「ここは戦場だ! 生きたいのなら、他者の命を奪うんだ。それが戦場の掟だ!」


 その者は夏郷から小刀を奪うと、敵である者を容赦なく、躊躇なく刺した。


「ひどい!?」


「なんてことを!?」


「酷いのは貴様らだ。覚悟もないのに戦場に現れて、敵の命も捕ろうとせずに」


「当たり前だろ! 誰が好んで殺すかい!」


「苦しみながら死ぬ方が、死なせる方が、よほどに惨いだろ!」


 その者が涙を浮かべながら言い放った。


「……あんたは」


「我々の勝ちでカタが着いたようだ」


「ここに倒れてるのって、あんたと同じ格好の」


「死んでいる、捨て置け」


「あんたの仲間だろ!?」


「仲間たちは覚悟をもって戦った。別の処へ埋めるのは、仲間への侮辱だ」


「くっ……」


 夏郷が悔しさを滲ませる。


「付いてこい」


「良かろう」


「破耶!?」


「アヤツは嘘はつかない。わたしの勘だがな」


「わかった」


※ ※ ※


「成る程な」


「信じるのか?」


 夏郷と破耶は自分たちの状況をすべて話した。


「ワタシにあれだけ大層な口を利いたからな」


「ワタシ? まさか、そなた!?」


 その者が、着けていた面を外した。


「戦場では、女というだけで嘗められる」


「そうだったのか」


「ワタシは早姫さきと申す。先程は事情を知らなかったとはいえ無礼を……御詫び申す!」


 早姫が二人に土下座をした。


「いいや気にしないでくれ」


 破耶が気にかける。


「やっぱり納得しない。命を捕るのにな」


 夏郷が不満をこぼした。


「我々の使命は、戦で勝利し、敵の首を持ち帰ること。それは敵も同じだ」


「殺るか、殺られるか」


「そうだ。敵に情けをかけることが敵にとって最大の侮辱になる。その場で命を捕らなくとも、その場で敵に情けをかけられたことで自害する」


「アリかよ!」


「貴様らの世界には関係ないことだ。忘れてくれて構わない」


「それはできない!」


「わたしもだ。関わってしまったからな」


「戦えるのか?」


 早姫の問いに二人は横に首をふった。


「無理はするな。明日一番で貴様らは自分たちの世界に帰るんだ、いいな?」


 早姫は二人に言うと、屋敷の見回りに行った。


「帰れるのか?」


「わからん。しかも今回は身体も一緒に飛ばされたらしいしな」


 破耶が制服の格好を見て言った。


※ ※ ※


「よし」


「うむ」


 一夜明け、二人は戦場で帰還を試みる。


「駄目か」


「他の方法は」


 2人が途方に暮れていると、鎧の集団がやって来た。


「そんな所に居ては危険だ」


 早姫が声を掛ける。


「また、戦うのか」


「無論だ。一番の首を獲るまではな」


「早姫さん!」


 破耶が声を掛ける。


「破耶よ。戦を悲観するな、戦は誇りの場だ」


「早姫さん」


 早姫は仲間と戦場に向かった。


「世界が違うんだ、彼女は」


「決めたぞ。早姫さんの戦が終わるまで、わたしはこの世界に残る!」


「言うとは思ってたよ」


「夏郷は帰れるときに帰るのだ!」


 夏郷が破耶を抱きしめる。


「お前を残して帰るわけないだろ」


「すまん」


「俺も見たいしな、戦の終わりを」

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