神様と十一名の人間
『俺がラストチャンス? 』
「そうだよ。 君がラストだ。君にはある程度期待しているよ。」
彼女の顔色からは余裕が伺える。なぜなら、神様だからだ。 俺らが住むこの世界が滅んだって、何の不自由もない。俺が負けた場合、この地球を太陽に送るようだ。 どうやら、俺らが苦しんで死んでいく所を見て楽しむ、残酷な野郎だ。
「うーん、それは少し違うね。私はこの世界のあらすじをついこの間まで書いてきた。その長さは何年とかのレベルじゃ済まない。途方もない時間をかけて、今の世界を創っている。あと、君は、私が残酷だと思っているが、それは違う。君たちが乗っている地球をそのまま太陽に送るわけないじゃないよ。 私は、過去に戻って、今の地球の元となった小さな玉を太陽に投げるだけだよ。 その後、君たちは過去を失った事によって、痛みすら感じる事なく消えてゆく。」
『まさか、俺の心を呼んだのか?』
「そのまさかだよ。神様だから、このくらいの事は出来るよ。」
そんな事が出来るなら、俺の未来も読めて、勝敗も分かる。こんな事をしなくとも、世界を滅ぼすなり、新しい物語を書くなり出来るはずた。俺は不思議に思う。
「さっき 私はこの世界のあらすじを書いてきたと言ったはずだ。だから、今は書いてはいない。全てを成り行きに任せている。一秒後、一分後は私にも分からない。」
彼女はそう言って立ち上がった。
「今からゲームの舞台へ行こう。」
彼女の合図と共に、俺は眩しい光に包まれた。俺が目を開けた頃には、目の前には彼女を含んで、十一名の老若男女がいた。
「ルールの説明。 君の右手にある机の上に一通の手紙があるはずだ。読むと良い。」
彼女に言われ、俺は机の上にある手紙を開けてよんでみた。
「其の一、問題は全てで四問あります。」
「其のニ、問一を解かない限り、問ニ、問三には進めません。」
「其の三、今から起こる出来事について、聞かれた問の答えで私を納得させなさい。」
「其の四、可能性がゼロでない限り、現実では起こり得ない事を起こす事があります。また、可能性が九九パーセント起こり得る事でも起こさない事もあります。この事を用いて考えなさい。」
「其の五、魔法や奇跡といった、現代社会では説明がつかない事を用いてはいけません。」
「其の六、今から起こる事は、あなた方人間にも遂行すること可能です。」
「其の七、最後の問題、問四を解けば、あなた方人間の勝利です。」
俺が黙読している間に彼女が読み上げた。読み上げるなら、わざわざこの手紙を用意しなくても良かったはずだ。何故用意したのかは、何と無く想像がつく。 多分、雰囲気を出す事だろう。
目の前にいる十人はこれから見る物語の登場人物だろう。俺はすぐに分かった。
「こいつらには名前を付けていないから、今から付けようか。 左から順番に、ミシェル、マイケル、トム、メアリー、ミリー、ビル、ジョン、ニック、ショーン、カイルと名付けよう。」
「では、ゲームスタートだ。」
彼女は彼らに名前を付けた後、元気な声で言った。俺はこれから、地球の未来を賭けて戦うのだ。子どもの頃のごっこ遊びとはスケールが違う。彼女の能力から見て、彼女は本当に地球を消し去る事が出来る。この戦いは決して負けられない。 俺は何としても、彼女が出す無理難題を解かなくてはならない。