月の下の大地
この地上の遥上には神様が住む天界がある。神様はそこで、この世の続きを書いている。
ある日、神様は自らが創り上げた世界がどれほどの完成度であるか確かめるために、地上へ降りて行った。
彼には両親がいない。彼が産まれた時に自分が殺したようだ。何故彼が親を殺したのか、何故産まれたての子が親を殺せる事が出来たのか、全く分からない。
つまり彼は、産まれた時から孤児であった。 その後間も無く、今の育て親に引き取られたのである。彼女は彼に会って最初に話しかけた言葉は「君にはこの世界を守るために戦う権利がある。これが私と君たちの最後の戦いだよ‼」であった。この話は彼が八歳の頃に聞いた話であり、内容がかなり曖昧になっている。
ディックは窓から覗く夜景を眺めている。彼がこうして外の風景を見るのは子どもの時からであり、見た景色の事はある程度記憶している。
『ん?昨日は三日月だったのにどうして満月になっているんだ??』
ふと、窓の外を覗いた彼は、自分の目を疑った。そこには満月があった。一見何も不思議に思う事は無いだろう。しかし、彼の記憶では昨日の月は三日月であった。それにもかかわらず、今日は何処も欠けていない、立派な月であった。三日月から満月になるまでは、約二週間程かかる。彼の目に映る月は本当に綺麗であったが、あまりにも常識外れな月に、彼は恐怖すら感じた。
『これは、夢? なのか?』
「夢じゃないよ♪ ちょっとした手品です♪」
急に聞こえた声の主は彼を拾った女性の声であった。
『それでは、この分けが分からないこの手品のタネを教えてもらいたい。』
「だから、ただの手品。いや、魔法かな?」
『 魔法でも何でも良いから早く教えろよ』
「どうしよ〜かな〜。 教えてあげよ〜かな〜。 仕方ない、教えてあげる。」
彼女はよくディックを小さな子どものように話しかけてくる。その事に彼は少し腹を立てる。彼女はそんな彼を見て、ニコニコしている。
突然、彼女の顔が険しくなり、重々しい声で話した。
「今日は君が十五歳の誕生日だ。私は君と出会う前から、君の十五歳の誕生日にこの事を話すようにを決めていた。」
『な、な、なっ、何だよ』
ディックは彼女の声に威圧され、うろたえた。稀に彼女はこうして真面目に話す事がある。 その時は必ず重大な話をするのである。
「私はこの世界の神様だ。 今から君には、この世界を賭けて、私と知恵比べをしてもらう。 もちろん、無理に参加しなくても良いがその時はすぐにこの世界を消してあげよう。」
『おい、ふざけるなよ。』
重大な話とは何かと期待したディックはあまりにも常識はずれな言葉にさらに腹を立てた。
「ふざけてなんかいない。私はこの世界の神様だ。別に信じなくても良いが、私を楽しませてもらおう。」
ディックは一瞬、彼女がまた彼を馬鹿にしていると思ったが、あの言い方は決して嘘ではない事が分かった。しかし、彼女が神様である確証はない。
『あんたが神様なら、これくらいのことは出来るはずだ。』
ディックは机の上にあった瓶を割った。
『これを手を使わず今すぐに直してもらう。』
よくテレビではマジシャンが割れた瓶を修復するのを目にする。しかし、マジシャンは割れた瓶を修復するのではなく、あらかじめ用意していたもう一つの瓶を割れた瓶とすり替えるのである。割れた瓶が勝手に修復されることはまずあり得ない。
「それくらいならお安いさ。」
平然を保つ彼女は割れた瓶に視線を向けた。すると、割れた瓶が勝手に動きだし、元の形に戻ったのである。
『嘘だろ?』
目の前で不可解な出来事を見たディックは口を開けて見ていた。
「だから私は神様だからと言ったじゃないか。 まぁ、さっきの質問にも答えてあげるよ。」
窓の外の月に向って腕を伸ばし指を鳴らすと、満月であった月が次第に欠けていった。
「このようにして月の満ち欠けも調整出来る。」
彼女の表情はいつも通りであったが、彼はそんな彼女が恐ろしく見えた。
『分かった。認めるよ。あんたが神様だということを。』
こんな不可解な事を楽々と成し遂げるのであるなら、彼女は神様であっても不思議ではない。彼は認めたのであった。
まず私(男)が言いたいことは、ここまで読んでくださりありがとうございました。
初心者ですので、下手な所が多々あります。そこは許して下さい。 また、ここはこうした方が良い、などの意見を是非下さい。