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01 どうやらゲームの世界である

気がつけば私は小汚い石造りの部屋の中にいた。

正面には木枠の窓。その右側には小汚いベッド。窓の左側には勉強机がある。

くるりと振り返ればドアがあり、その脇に洋服ダンスがおかれている。

これは一体…?

ゲーム開始場面としてはよくある絵だが、まさかまさか。

私はそんなことを思いつつ、とりあえずゲームでコントロールがユーザーに投げられた時最初にやるように身の回りをチェックすることにした。最初はタンスからだ。タンスはおおまかに上下にわかれていて、下の方は4段の引き出し、上は観音開きになっている。

一番下は下着…やたらカワイイふりふりが多い。ただしブラのサイズは割りと小さめである。

二段目も下着だがコチラはインナーという枠の下着だ。あとベルトとか納められている。

三段目はハンカチやティッシュ・リボン・少量のアクセサリーとともに救急箱が置かれていた。

四段目…下の段の一番上にはブラウスやズボンなどの洋服があった。

そして上の段には丈が長めの服…いや軍服か?…やコートがかけられており、その下の空いたスペースにはカバンがおかれていた。

ベッドには…特に何もない。

机は…と調べようとしたところで、私は机の上にある鏡とそこに映る少女の姿に気付いた。

「これは…私?」

ゲームのパッケージにかかれていた金髪の少女がそこにうつっていた。

大きな藍色の瞳に小さな唇。可愛らしいといって差し支えない顔立ちで、金髪はくるくるっとしていて両脇に赤いリボンでくくられている(頭から食われる某マミさんの髪をもっと上の方にもっていった感じ…といえば想像がつきやすいだろうか。摩訶不思議な髪型だ)。

「ゲームの主人公…」

乙女ゲームというやつは、実際にゲームの中に入り込んでしまう体感系のゲームのことをいうのだろうか?…ってそんなわけ…とおもったところで、ドンドンっと扉が叩かれる音がした。

「ヒグッ」

おかしな悲鳴を上げて飛び上がる私。

「おい!いるんだろ!開けるぞ!」

扉があき、姿を表したのは長身の青年だった。

不機嫌そうな顔をつくる紺色の髪の青年。…たしか取説に出ていたような…?

「あぁやっぱりいたな。おい、下に集合だ。いくぞ」

「……はい」

わけがわからないがとりあえず返事をしてついていこうとすると、「剣を忘れているぞ」ということばとともにベッドの方を顎で刺される。

剣?とそちらを見ると、先ほどまではなかったはずの細身の剣がベッドに立てかけられていた。よくわからないが、そういうゲームシステムなのだろう。あまり深くは考えまい。

「えーっと、それでお前の名前はなんだっけ?」

ゲームならばここで名前を入力する画面が開くはず…だが、そんなものは開かなかった。

私は少し考え「ユノ」と名乗った。

この名前は本名ではない。私がゲームをする時、女のキャラクターが主人公だった場合に使う名だ。ちなみに男のキャラクターの場合は『レオ』となる。

「あぁ、そうそう。ユノ=グランデだったな。ところで俺の名前は覚えているか?」

これもまたゲームなら名前の入力画面が出ることだろう。好きな名前を入れると、その名前をキャラクターにその名乗らせる事が出来る…という、比較的よくあるものだが、私は普通キャラクターの名前をカスタマイズすることはない。

首を横に振ると、男は不満そうな顔をつくった。

「おいおい、初日に名乗ったろ?俺の名前はエド=リュミエだ。エドってよんでくれ」

私はカタカナの名前を覚えるのは苦手なので、彼は江戸だと頭にメモった。


 *


江戸に続いて広場に出ると、そこには私達と同じくらいの男女が100名ほど集まっていた。みんな青い軍服のようなものにシルバーの胸当てをつけている。

自分を見下ろすと…私も似たような格好をしていた。

彼らはなにやら緊張した面持ちで「私、弓は苦手なんだよねぇ」とか「やっぱフェリン様の下につきたいな」とか「一緒のクラスになれるといいなぁ」とかしゃべっている。

状況から察するに…私達はおそらく新兵か、その見習い、もしくは騎士学校の生徒といったところか。

みんな十代の半ばくらいだし、生徒という線が一番有力だ。

そんなことを考えていると奥の建物から何人かが出てくるのが見えた。

すると「おい、並ぶぞ」と誰かが声を上げると共に、一堂が整列を始める。

どこに並べばいいかはわからないが、とりあえず私も江戸につづいて適当に列に並んだ。

「よし、揃っているようだな」

そういって壇上に上がったのは、濃い海藻色の髪をした20代半ばくらいの男だった。

「まずはおめでとうといっておこうか。君たちは試験の結果、我がルヴェミール騎士学校への進学を許された。これから三年間、みっちりと学び、体を鍛え、ゆくゆくはルヴェミール王国の支えになるべく励んでほしい」

私はその言葉を聞きながら、なるほど最初は学生として並びつつゲームシステムを少しずつ学ぶのだなと納得した。

おそらく、そこで学びステータスを上げつつ、ちょっとした任務についたりなんかして仲間を集っていくのだろう。

そして後々大きな事件が起こり、私はその大きな渦へと巻き込まれていく…というわけだ。

昔何かのゲームで似たようなのがあったな…と私は思い起こす。

そのゲームにおいては、学校で過ごすのはゲームへの“慣れ”の時間…ではあったが、その期間どうすごしたかという評価は、後々、学校を卒業した時や、学校を出てからに響いたものだった。

こんなリアルな体感ゲーがあるとは思えないが、ゲームとしか思えない状態。

これはゲーマーとしてかなり燃える展開である。

私は壇上の男の話す言葉を適当に聞き流しながら、右手でぐっと拳を握りしめ…その手の細さに大きな不安を覚えた。

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