1、始まりの告白
もし、あなたが偶然にも好きな人の秘密を知ってしまったらどうしますか?
放課後、俺は走る。彼女を目指して。メロス並とはいかないが走る。そして・・・
「白峰さん!」彼女の名前を叫ぶ。彼女は振り返り立ち止まる。
「何?水野君?」柔らかい声で俺の名前を言う。いつもならここで骨を砕かれる俺だが今日は違う。
「好きだ!!」
俺の名前は水野伊織。ごく普通の高校二年生。だがこんな俺にも好きな人がいる。
―――白峰亜紀。学校のアイドル。
男女ともに好かれており、さらに成績優秀で演劇部部長。
しかーし!一見無理そうでも今まで読んだマンガでは大体俺みたいな普通の高校生が主人公系に告白するとだいたいうまくいくという法則が・・・
「え・・・あの・・・」
と少し困った顔で言った。
まさか・・・NO!?
俺のマンガの法則が~!!
やべ~よ、俺!!結構気合はいったモノローグしてたのに!!
俺がもだえ苦しんでいるときょとんとした様子で彼女は言った。
「猫、好きなんですか?」
猫?そんなのどこに・・・と思ったら
俺の目の前に学校に住み着いているノラ猫(にゃん吉)がちょこんと座っていた・・・
次の日の教室。俺が入ってきた時にニヤニヤと笑いながら寄って来た奴がいた。
「で、どうだった?忠邦」
こいつは松田秀俊。俺の小学校からの友達だ。忠邦というのは俺のあだ名であの天保の改革の水野忠邦と同じ苗字だからである。
「まぁ・・・な」
「あ~あ、やっぱり振られたか」
「やっぱりってなんだよ。あっお前こういう結果になるって情報入ってたな!」
「あぁ」松田は黒の伊達メガネをすっと取り出し、かける。
「まずこの円グラフを見てくれ」
そう言いながら馬鹿でかいコピー紙をつなげたような紙が出てきた。
「はぁ」
「おっ、なんだ。今、松田ロジックモードなのか」クラスメイトの誰かが言う。
ロジックモードとは松田が黒のメガネをかけたときになるよく分からんものだ。
このモードになると全てを論理的に説明してくれる。(かなりうざいけどな)
「この円グラフは白峰亜紀に告白した場合にどうなったかを示している」
「・・・全部青一色なんですけど・・・」
「赤は成功、青は失敗だ」
「・・・」
全部失敗してるってことか。
「ちなみに理由は・・・」
「いや、いい。じゃあ何で俺が告るって言った時に止めてくれなかったんだ?」
「まず理由1」松田が人差し指を立てる。
「忠邦に言っても『マンガの法則ならいけるはず!!』と言って聞かないだろうと思った」
うっ
「2、俺はロジックモードではなかったので判断できなかった」
うっうっ
「3、面白そうだったから」
グハッ、バタッ
「わぁ~忠邦がロジック松田に殺られた~!!」
すっとメガネを取る松田。
「あれ?どうしたんだ?忠邦?」
ちなみに松田はロジックモードの時の記憶がないはた迷惑な奴である。
この時は知らなかった。
俺が白峰亜紀に告った(?)事であんな事になるなんて思ってもみなかったんだ・・・
「勿体つけたモノローグしてると作者が泣くぞ」
「うるさい!ロジック松田!!」