「例え見せ掛けだとしても」
イル様にマントをお返しするという用事も終え、引き際に迷う私はおろおろと視線を彷徨わす。
それはイル様とて同じみたいで、言葉を探しながら、言い辛そうに口を開いた。
「あー……、紅茶、でも、飲んでゆかれますか」
イル様がそういいつつ視線を移した先には、テーブルの上のティーセット。
「え、えっと……」
途端に、頭の中で論争が起きる。
お断りしてさっさと帰るべきか、お誘いにのってちょっとでも距離を縮める努力をすべきか。
結局、
――――いつまでも逃げてちゃ、なんだか情けない。
そんな結論を出した私は、こくりと頷いた。
「では……、お言葉に甘えて」
「では……、どうぞ。すぐに、カップをもう一つ持ってこさせますので」
イル様の部屋に招き入れられ、私はおずおずと、椅子に腰を降ろした。
すぐに侍女が現れ、私に茶を注ぐ。
始まったのは、静かすぎるくらい静かなティータイム。
互いに一言も発しないまま、どれほどの時間が過ぎただろうか。
「……あの、イル様?」
おずおずと口を開けば、彼が私を見た。
「あの…、なぜ、お茶に招いたんですか? イル様は、私のことが嫌いでしょう?」
私の言葉に、彼の眉がぴくりと動いた。
「ええ……、そうですが、国民への婚約発表までもう一日もありませんし。
でしたら、少しでも良くなる努力をしようと思いまして。姫もそうでしょう?
……図星、という顔をしていらっしゃいますよ」
くすりと彼の顔に浮かんだ笑みに、腹立ち紛れに紅茶を口に含む。
予想以上の厚さに涙を滲ませながら、私も口を開いた。
「まあ……、そうですけど。
私にはイル様かアルヴィン様と結婚するしかありませんし、きっとこのままでは、イル様とになるでしょうし。
だからイル様」
かちゃん、と紅茶のカップを置き、彼の瞳を見つめる。
「見せ掛けでも、私に好かれるような人になって頂けませんか。
私も、見せ掛けだけでも良い女性になるよう頑張りますから」
「……良いでしょう。
姫が、良い女性を演じられるかどうかは謎ですが」
……私も、イル様が良い男性を演じられるかは謎ですが。
その言葉を口に出さなかったのは、“良い女性”を演じる為の第一歩。
ぎ、ぎりぎり4月中に更新…っ!!
しかしながら、中間試験が迫って来てます。
推薦欲しいから評定頑張らねば…。
高校二年になると忙しいですね…というのは言い訳ですね。←
更新、頑張ります!!
そしてそして、ストックがなくなってしまいました←