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「一歩前進したことを、喜ぼう」

 「噴水に落ちるなんて、久しぶりですね。姫様」


 くすりと笑いながら、ナミが私の髪を拭う。


 「そうね、小さい頃はよく城の池に落ちてたけれど」

 「……あの時は本当に心臓が止まるかと思いましたよ。今回は噴水でしたけど、城の池は深いんですもの」

 「決まってユアンが助けてくれたのよね」

 「ええ、あの頃からユアンはとっても凛々しくて……」


 ぽうっと頬を染め、乙女モードに入ったナミ。

 ユアンの魅力を語りつつも、櫛で私の髪を丁寧に解かす。


 「……それにですね姫様……」

 「ナミ、ユアンのことはよく分かった……というより知っているから。それよりも今は、イル様のことが……」


 ナミの言葉を遮り、私はため息を漏らした。

 次にイル様にあった時、どんな小言を言われるかと考えるだけでため息が出る。


 「そういえば姫様、先程羽織られていたマントはどなたの……?」


 ふと思い出したのか、ナミが尋ねた。

 

 「ああ、イル様のよ。寒いでしょうって貸して下さったの」

 「イル様のっ!? それは……、そんなお優しいことを……、あのイル様が?」


 信じられない、と言った口調のナミ。

 くるりと振り返ると、彼女の表情は驚きに満ちていた。


 「信じられないけれどね。まぁ……、いらいらして腹が立ってすっごく失礼な方だけど……、優しい所もある……、という可能性も……、あるのかも……しれないわね」


 自分の声がどんどん小さくなっていくのを感じながら、私はそう呟いた。


 まさか姫様っ!! と、ナミが私の肩を掴む。


 「イル様に少しでも好意が……っ!?」

 「ま、まさか!! ありえないわよそんなこと! 少しでも普通になった、というのならあるかもしれないけれど……っ」

 「そ、そうですか?」

 「そうよ! イル様のことなら、考えるだけで彼の言った失礼な言葉の数々が思い浮かぶし、それらを思い出しただけで彼のことを殴りたくなるほどに腹が立つし!」 

 「そうですよね!」


 こくこく、とナミが頷いて――――、でも、と呟いた。


 「少しでもイル様のことが、普通になったのなら……、良いかもしれませんね」

 「……良い?」


 ナミの口から出た思いもよらない言葉に、私はきょとんとして彼女を見つめた。

 ええ、と頷く彼女の顔に浮かぶ、微かな笑み。


 「イル様は、とっても嫌なことですが、姫様の夫となられる方なのですし……、もちろん私は認めていませんけれど。ただ、それは仕方のないことですし、少しでもイル様のことが以前より良くなったのなら、姫様にとってもそのほうが良いでしょうし……」


 ふわりと笑うナミを顔を、私は見つめた。


 少し考えてから、そうね、と笑い返す。



 今は何より、私の彼への感情が、一歩前進したことを喜ぶことにしよう。







 

更新が遅れて申し訳ありませんでした。



まさか元日から更新していなかったとは…っ!



言い訳させて頂きますと、先日「更新して感想が来た」夢を見まして…。


てっきり更新したと思っていました。←



嘘みたいな本当の話なんですすいません!

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