表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/60

「リイナ様、あんな息子ですけれど、よろしくお願いしますね」


 「お妃様、今何と?」


 耳をもみもみマッサージしてから、そう聞き返す。

 変わらぬ笑顔のまま、お妃様は言った。

 

 「口付けしてしまうの。リイナ様とイルが」


 ……まだマッサージが足りなかったらしい。

 ぐりぐりぐりーっとこめかみを揉んで、再び尋ねる。

 しかしそれに返ってくるのは、やはり同じ答え。


 「……何故ですか……?」


 どうやら空耳ではないらしい。

 お妃様のとんでもない発言をそう判断した私は、震える声で尋ねた。

 汗がだらだら流れ落ちる私と違い、爽やかな笑顔のままのお妃様。


 「昔からよくあるじゃない。王子の口付けで愛に目覚める姫君のお話。今はイルのことを良く思っていなくとも、口付けすればきっと愛に目覚めるはずよ」


 きゃぴきゃぴというお妃様は、少女のように可愛らしくて。

 でも、話している内容には、とても同感出来なかった。

 それにお妃様、王子のキスで愛に目覚める姫君のお話なんて、私は初めて聞きました。


 「いや、でも、お妃様、そんなお話みたいに行くことなんてありませんし……」

 「大丈夫よ。王子に姫なんだから、きっと上手く行くはずだわ」

 「いや、でも、王子と姫と言っても、私とイル様の仲ですし……」

 「その二人の仲に愛が芽生えるのよ。感動的じゃない」

 「いや、私にはそんなことが起こるなんて、まったく想像出来ないんですけど……」

 「大丈夫。リイナ様なら大丈夫な気がするの」


 私の反論を、ことごとく笑顔で流すお妃様。

 さすが、イル様とアルヴィン様とアリス様のお母様。


 そんなお妃様に困り果てている私に助け船を出してくれたのは、イル様だった。


 「母上……。急に口づけだなんて、話が飛びすぎです。リイナ様も私も、そんなことは全く望んでいませんし、それで私たちの仲が改善されるとも思えません」


 そんなイル様の言葉を聞きながら、こくこくと私は頷く。

 恋愛には付き物の口付け。年頃の娘が聞いたら、その単語だけで黄色い悲鳴を上げる口付け。でもその相手がイル様と考えるだけで、悪夢にしか思えない。


 「あら、イル、そんなことはないわ。いくら仲が悪かろうとも、女の子はキスに憧れるものよ」

 「いえ、そんなことはありませんし、私と姫の場合は特に……」

 「いいじゃないの。国の為よ、国の為」


 にこっと笑うお妃様は、国の為といいつつも、本人が一番楽しんでいるように見える。

 ちなみにアルヴィン様が、「母上それでは是非私が……」なんて言っているけど、こちらは無視することにした。


 「母上、ですからこんなことが国のためになるはずもありません。母上が楽しいだけでしょう」

 「あら、違うわよ。レフリア王国とルーン王国が仲が良いって思われた方が、国政的にも良いじゃない」

 「それはそうですが……」


 ぐ、と言いよどむイル様。

 しかし、今回ばかりは応援したい。だって、彼がお妃様に負けてしまったら、私はイル様と……。

 考えるだけで、寒気と悪寒がしてくる。


 余裕の笑みを崩さないお妃様を、じっと眺めるイル様。


 「……とにかく、そんなことはしませんので!」


 いつも理詰めで相手を黙らせるイル様にしては珍しく、少し大きい声でそう言う。

 そして、つかつかとその場から立ち去ってしまった。


 あらあら、なんて、お妃様は頬に手を当てている。

 そして、


 「……リイナ様、あんな息子()ですけれど、よろしくお願いしますね」


 花が咲いたような笑顔でそう言われて……、私も、笑顔を返さぬわけにはいかなかった。








何故タイトルがお妃様の台詞なのか、謎です。←


そして…、

九月の更新、一回だけで申し訳ありませんでした…。


じゅ、十月こそは…っ!

と思いつつも、中間テストの月です。←


ううう、中間テストの前日が誕生日だなんて…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ