「この咲き誇る花々も、大空を優雅に舞う鳥たちも、貴女の美しさには敵いません」
結局、イル様、アルヴィン様、アリス様、そして私で、レフシア王国自慢の庭園へとやってきた。
咲き誇る色とりどりの花々に、澄んだ池を悠々と泳ぐ水鳥。
庭園とはいえど城から離れていて、兵士の姿もあまり見られない。
「わ……、綺麗ですね」
思わず漏れる、感嘆の声。
そんな私の隣から聞こえるのは、
「でしょう。まぁ、この咲き誇る花々も、大空を優雅に舞う鳥たちも、貴女の美しさには敵いませんが」
いつも通りのアルヴィン様の台詞。
最初の頃のように鳥肌が立たなくなったのは、慣れてしまったからだろうか。
そして私とアルヴィン様から数メートル離れたところには、イル様とアリス様の姿。
アリス様はきらきらした目で、イル様に何かを言っている。それを、苦笑交じりで聞いているイル様。
ここから見ると、“良いお兄さん”に見えないことも……ない。
「リイナ姫? どうしました?」
その声に、はっと我に返る。
気が付けば、目の前数㎝の位置にアルヴィン様のお顔。
「きゃぁぁっ!」
思わず飛び退く私を見ても、きらきら笑顔を崩さないアルヴィン様。
「どうしました? 飛び退くなんて、酷いお方だ。傷ついてしまいますよ?」
なんて、まったく傷ついてない顔で言う。
「だ、だって、アルヴィン様、距離が……っ!」
「……ああ、いっそのことあの距離ならキスまで行ってしまえば良かったと? そうですね、では今から……」
「ち、違いますっ! あの、近いです、距離がっ!」
「精神的距離がまだ遠いようなので、せめて物理的距離だけでも近くでありたいと思ったのです」
「ち、近くじゃなくて良いですから!」
必死に反論する私と、きらきら笑顔であんな台詞をさらっと言い続けるアルヴィン様。
「照れてしまいましたか? 大丈夫、照れてもリイナ姫はとても可愛らしい……」
「アルヴィン」
ぺらぺらと続けようとしたアルヴィン様の言葉を遮ったのは、呆れた調子の低い声。
―――――イル様だった。
「兄上」
少し驚いた様子で、アルヴィン様がイル様を見上げる。
「なぜ、止めるのですか。何度も言いましたが、兄上は私とリイナ姫が婚約することに異論はないのでしょう?」
「だから、アルヴィン。お前の方法では逆効果だろう。そんな言葉、聞いているだけで寒気がするぞ」
「兄上は女性と付き合わないから分からないのです。女性と言うのは、ロマンチックな台詞を言われたいものなのですよ」
「それはお前の主観だろう。それにアルヴィン、忘れたのか。姫は普通の女性とはかなりずれている」
私を完全に蚊帳の外にして、話を続ける二人。
イル様、『姫は普通の女性とはかなりずれている』って……。もういちいち突っ込まないと、心に決めました。けれど、それをさらっと言ってしまうのもどうなのでしょうか。
心の中でため息をついていた時、
「きゃあっ!!」
そんな、アリス様の悲鳴が聞こえた。
合宿前更新。
次の更新は八月になります。
あと、あの、人気投票にあまりに票が集まらないので(笑)
皆様、是非、投票してくださいませ…っ!
いや、あの、票が集まらないのは覚悟していましたが(笑)。
最後に一言。
今回の題名の台詞、シェイクスピアとかにありそう(笑)。