「美しい花々に囲まれたなら、貴女のお心も私に向いてくれることでしょう」
心地良い布団の肌触りと、カーテンの隙間から除く日の光。
とても寝起きの良い朝だ。
「おはようございます、姫様。朝食のご用意が出来ていますよ」
そう笑顔を見せるナミに、おはよう、と返す。
今日は、のんびりと過ごす日。昨日から決めていた、イル様ともアルヴィン様とも関わらない日。
……そう、決めていたのに――――。
*
「……あの、どうなさったのですか? アルヴィン様」
部屋を出た私を待っていたのは、きらきら爽やかスマイルのアルヴィン様。
今日は、会う予定はなかったはず。なのに、アルヴィン様が私を待っていたのは、日を見るより明らかだった。
私が首をひねっていると、アルヴィン様はきらきらの笑顔のまま、
「今日はリイナ姫と、我が国一の花畑へ行こうかと思いまして。花畑と言ってもこの城内の庭園なのですが、とても美しいのです」
そう、言った。
思わず、はい? と問い返す私。ご丁寧に、アルヴィン様は同じセリフをもう一度繰り返す。
やっと、理解できた。
「私は今日、アルヴィン様とご一緒に花畑へ行くのですか?」
「ええ。私とリイナ姫、二人っきりの花の園です。さぞかし美しく、ロマンチックなことでしょう」
「……私は今日、一人でゆっくり……それか、お妃様とのんびり過ごすつもりだったんですけど……」
「リイナ姫が滞在している貴重な日々です。私は一日たりとも無駄にはしませんよ」
そう言って、きらっと輝く歯を見せて笑うアルヴィン様。
私の後ろで、ナミが肩をすくめている。でもナミ、貴女の恋人も、同じような言葉を貴女に言っているわよ……?
「さぁリイナ姫、馬を待たせています。早速参りましょう」
「え、いや、あの、アルヴィン様、私は……っ!」
「美しい花々に囲まれたなら、貴女のお心も私に向いてくれることでしょう」
「や、あの、私の心がアルヴィン様に向くことは……っ」
「それによく、“善は急げ”、と申すでしょう」
「これは善じゃありませんっ!」
私の抵抗も虚しく、私を抱き上げて馬へと急ぐアルヴィン様。
「あの、姫様、今お助けしますからっ!」
「ぜ、是非助けて欲しいけど、貴女がアルヴィン様に何かしたら、国際問題になっちゃうからだめーっ!」
どんどん離れていくナミに、私は声を張り上げて叫ぶ。
と、不意に、アルヴィン様の足が止まった。
「アルヴィン様?」
もしかして、気を変えてくれたのかと……思った私が間違っていた。
彼の足を止めたのは、彼の前に立ち塞がった人物――――、イル様。
最近思ったことですけれど、イル様、性格が悪いわりには、本当に良い時に登場してくださいますね。
のろのろ更新ですいません。
今日からテスト一週間前なので、六月最後の更新です。
レフシア王国に居る限り、リイナに平穏な日々が訪れることなんてありません←
ごめんね、リイナ(笑)。
つかアルヴィン様、久しぶり(?)の、気持ち悪いような、クサイような台詞です(笑)。