表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/60

「これは兄上からリイナ姫を奪うチャンスです」


 「さて……リイナ姫を街に放って行ってしまった兄上は、一体なにをしているんでしょうね?」


 城につくと、アルヴィン様がふいにそう言った。

 そして、私の手を握ったまま歩き始める。


 「えっと、あの、アルヴィン様、もう城につきましたし、手を握ってもらう必要は……。私、お部屋に帰ります」

 

 そう言いつつ、私はアルヴィン様の手を自分の手から離す。

 朝から、アルヴィン様とイル様ばかり。もう限界だ。やっと、部屋に帰って落ち着ける。そう思ったのに、


 「お待ちを、リイナ姫」


 なぜ、アルヴィン様は私を呼び止めるんだろう。


 「何でしょうか?」


 笑顔を浮かべて、首を傾げて私は聞く。

 アルヴィン様はにっこりと笑い、私の手を握りなおす。……お願いします、離してください。


 「兄上とアリスの元へ行きましょう。リイナ姫も、兄上に対して文句の一つや二つ、あるでしょう?」

 「えっと……まぁ……、一つや二つと言うか、十も百もありますけど……」


 もごもごと口ごもる私を見て、決定ですね、とアルヴィン様は笑った。

 えっと、文句はあるけど、イル様のお部屋に行くなんて……。心の中でそう呟いても、


 「では、行きましょう。私にとっても、これは兄上からリイナ姫を奪うチャンスですし」


 アルヴィン様はきらきらとしたオーラを纏ってそう言うと、強引に私の手を握り、足取りも軽くイル様の部屋へと急ぐ。

 アルヴィン様、それが目的なのですね。そう、心の中で呆れ気味に呟く。でも……一つだけ、アルヴィン様にお教えしなければなりません。チャンスも何も、イル様は寧ろ“奪ってほしい”といつでも思っているに決まっていますよ?


                   ******



 「兄上、アルヴィンです。失礼します」


 こんこんとノックをし、アルヴィン様は扉に向かって言う。

 それを見て、


 「り、リイナです。失礼しますっ」


 と、私も慌てて言った。

 姫!? という、少し驚いた声が内側から聞こえる。扉を開けて中へ入ると、チェス盤を挟んで、向かい合っているイル様とアリス様。


 「姫……なぜ、私の部屋に?」


 絶対に、来たくないはずでは? 口に出してはいないが、そう目で聞かれる。

 ええ、そうなんです。来たくなかったんです。アルヴィン様に強引に連れていかれたんです。私も目でそう言ってから、ふとアリス様へと視線を移す。途端に、


 「アルヴィン兄様、リイナ様、なぜここに……。私は今、イルお兄様とチェスを楽しんでいたんですのよ? 邪魔しにきましたの?」


 頬をぷうっと膨らませて、そう睨まれた。喋っていることは置いておいて、頬を膨らませているアリス様はとても可愛い。


 「……楽しんでいた? アリス、これが? どう見ても、お前が兄上にぼろ負けしているようにしか見えないが?」

 「あ、アルヴィンお兄様は黙っていてくださいませっ!」


 アルヴィン様の指摘に、頬を真っ赤にして怒るアリス様。チェスのルールは知らないけど、私にも分かる。アリス様の白い駒は、イル様の黒い駒よりずっと少ない。

 そんな考えを読まれたのか、アリス様は今度は私に噛み付く。


 「い、良いんです! イルお兄様と二人きりでチェスをしたという事実が、私には嬉しいんですもの!」


 怒った猫のような剣幕に、私はただ頷くしかなかった。

 そして、やはり、と心で呟く。

 やはり、アリス様も十分おかしな方だ、と。










更新が遅れて申しわけありません。


そして、謝罪がもう一つ。

高校の忙しさとネタが出ないのとで(←)週一更新は難しい……というか、無理です←おい。


でも、のんびりとでも執筆を続けますので、どうか羽月をこれからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ