「このリイナ姫は、私の妻となる予定の方だ。それを知っての無礼か」
どうしようどうしようどうしよう。
心の中でどんなにそう言っても、目の前のガラが悪そうなお兄さん達が、消えてくれるはずも無く。
「お、キレーな姉ちゃんがいるじゃねえかあ」
案の定、目をつけられてしまった。
自然に目をそらそうとするが、あっという間に囲まれる。
「え、と……。何か用でしょうか……」
このお兄さんたちは、私がイル様の婚約者であって、ルーン王国の王女だなんてことはもちろん知らない。つまり、見逃してくれることも無くて……、
「姉ちゃん可愛いからさ、俺らと遊ぼうってこと」
こんな展開になってしまう。
イル様はアリス様と共にどこかへいったから、いつかのように助けにきてくれることも無い。
つまり、本当に“絶体絶命”なのだ。
「いえ、あの、私は……遊ぶ気は……」
そう言いつつ下がろうとしても、お兄さんたちに腕をつかまれる。
「姉ちゃんにはなくても、俺らにはあんの」
ぐいぐいと私をひっぱるお兄さんたち。しかし突然、その腕がふり払われた。
白馬に乗った王子様のような登場の仕方をしたのは―――アルヴィン様。彼が、お兄さんの腕をつかんでいる。
「お前は……たしか、女たら……や、えっと、第二王子の……ッ!」
お兄さんの一人が、アルヴィン様を指さして言う。
今、“女たらし”って言いかけませんでしたか? アルヴィン様の性格は、こんな危なそうなお兄さんにも知られるくらい有名なんですか。
助けてくれたけど……そんな彼を見て、私は心の中でため息をつく。
しかしアルヴィン様はそんなことを知らずに、お兄さんたちに言う。
「このリイナ姫は、私の妻となる予定の方だ。それを知っての無礼か」
……ちょっと待ってください。
妻となる予定の方? なんですか、それは。初耳なのですが。いえ、それらしいことは知ってますけど、そんな確定したものじゃないのですが。
私の心の中でそんな疑問が湧き上がるけど、それに応えてくれる人はいない。
「っく、王子の許嫁じゃ手ェ出せねぇ……」
お兄さんの一人が、もう一人にそう囁いている。
いや、あの、許嫁は許嫁でも、アルヴィン様のではないんだけど……。
「っけ、“妻となる予定の方”が、一体何人いるのか知りたいもんだ」
そう呟いているお兄さんもいる。
それが聞こえているはずなのに、アルヴィン様は対して起こった様子も見せなかった。
結局お兄さんたちは、
「今なら、リイナ姫と知らなかったということで見逃してやる。さっさと去るが良い」
アルヴィン様のその言葉で、ぶつぶつ言いながらも去って行った。
私はお兄さんたちの背中を見送り、アルヴィン様に向き直る。
「あの、ありがとうございました。アルヴィン様が来てくれなかったら、どうなってたか……」
「いえいえ。私こそ、すぐに見つけられなくて申し訳ありませんでした。間に合ってよかった」
きらきらとした笑顔を私に向けるアルヴィン様。
でも、アルヴィン様……。今更って感じもしますけど、つっこんで良いですか?
さっきのお兄さんの言っていた、「妻となる予定の方がいったい何人いるのか知りたいもんだ」。あそこまで言われるとは、どうなのでしょうか……?
申しわけありません。先週は大忙しで、更新をすっかり忘れていました……ッ!!
……お決まり展開も、王子がアルヴィンだとあまりときめきませんね←