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「どうやら、私の恋路は厳しいようですね」


  「……ということになったの」


 お茶会でのことを、部屋で待っていたナミとユアンに話す。

 反応は、正反対だった。


 「なんですってっ!? アルヴィン様がそんなことを!?」


 目を丸くして、大声を出すナミ。

 そして、

 

 「あはは、アルヴィン王子も必死だな。リイナのどこがそんなに良いのか」


 けらりと笑うユアン。そんなユアンは、


 「ユアン! 姫様のことをそんな風に言わないの!」


 と、ナミに頭をはたかれる。

 

 「ごめんナミ。でも……アルヴィン王子がなぁ……。なんか変な展開になってきたな……」


 

                   ****



 すぅ……と、息を吸う。

 目の前には、大広間の扉。今は、夕食の時間だ。


 「……失礼致します」


 そう言って、私は扉を開けた。その中には、もう見慣れたアヴィンセル王家の面々。

 挨拶をして、席に着く。


 「では、リイナ殿も到着したことだし、食べようか」


 国王様のその言葉を合図に、豪華な料理が運ばれてくる。

 かちゃかちゃという、ナイフやフォークの音。サラダを食べていると、(なぜか)また隣のアルヴィン様が話しかけてくる。


 「リイナ姫、明日は何か用事はお有りですか?」

 「むぐ……あ、明日、ですか―――?」


 サラダをほおばっていた私は、慌ててそれを飲み込む。

 王女なのに、なんて思わないでほしい。おいしいものは、口いっぱいに頬張りたい。


 「明日は……はい。何も、予定はありませんが……」

 

 私がそう頷くと、アルヴィン様はぱっと顔を輝かせた。

 そして、きらきらとした笑顔で、


 「では、明日は私と共に町へ行きませんか?」


 と尋ねた。げほ……と、私は思わず咳き込む。


 「町へですか? あ、アルヴィン様と……?」


 目を丸くして尋ねる私に、アルヴィン様は笑顔のまま頷く。


 「ええ。―――私では、お嫌ですか?」

 「あ、あの……いえ……」


 本当は、こくっと頷きたい。真っ向から肯定したい。

 でも、やはり肯定するわけにはいかず―――、


 「町へ行くの、楽しみですわ」


 そう、微笑むしかなかった。

 そんな私たちの様子を見て、豪快に笑う国王様。


 「アルヴィン、必死だな」

 「笑わないでください、父上。時間制限タイムリミットは7日間しかないのですよ? 私だって、必死になります」


 少し、むくれたような顔をするアルヴィン様。

 

 「ははは、すまないなアルヴィン」

 

 国王様は、口では謝りながらもまだ笑っている。はぁ、とアルヴィン様はため息をついた。

 

 「イル」


 ひとしきり笑うと、国王様はふいにイル様へ話を振った。

 七面鳥を食べていたイル様は、国王様を見た。


 「なんでしょう、父上」

 「お前は、何も感じないのか?」


 その問いに、は? という顔をするアルヴィン様。

 国王様は、呆れたような顔をする。


 「だから、リイナ殿はお前の婚約者だろう。そのリイナ殿と、お前の弟のアルヴィンが町へ行くんだぞ」

 「それは―――」


 イル様は気まずそうに、視線をさまよわす。


 「そうですね。しかし、アルヴィンも本気で姫のことを好いているようですし、今はただの婚約者であり、アルヴィンの兄である私が、止めることも―――」

 「イル、お前がそんなことを言ってどうする。それではリイナ殿に愛想を尽かされてしまうぞ」


 イル様の言葉を遮って、国王様はそう言う。

 もう、愛想を尽かしています。そんなこと、言えるわけもない。

 そんなことを思っている間に、話はどんどん進む。


 「父上、父上は私の邪魔をしすぎです。兄上とリイナ殿の仲ばかりを応援するのではなく、私とリイナ姫仲も応援してくれませんか」


 アルヴィン様は、ため息交じりに国王様を見た。

 

 「最初に言っただろう。わしは、リイナ殿とお前ではなく、リイナ殿とイルが良いと思うと」

 「……そうでしたね」


 国王様の言葉に、頷きながらも項垂れるアルヴィン様。

 

 「どうやら、私の恋路は厳しいようですね」


 ……私にとっては、厳しくて結構だけど。












いつの間にやら、もう27話なのですね。

……こんなにかかってもくっつかない主人公ってどうなんだろう。

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