「リイナ姫の婚約者を兄上から私に変更してもらえませんか?」
「ところで父上」
国王様がひとしきり笑った後、アルヴィン様がそう切り出した。
「兄上とリイナ姫も含めて―――少し相談があるのですが」
そう言って、アルヴィン様は私とイル様を見る。
私を見たとき、笑顔を見せながらウインクをしたのは……見なかったことにしよう。
「何だ?」
国王様が、む? とアルヴィン様を見る。
「アルヴィンのことです。どうせ、町の娘に惚れたから侍女にしても良いかとか、嫁に迎えたいとかそんなところでしょう」
イル様がそう国王様に言う。
アルヴィン様の家族内での評価―――というより、イル様とアリス様からの評価はとても低いということが、痛いほど分かった。
「いいえ、兄上。そんなことではありませんよ。私はそこまで女たらしというわけでは……。兄上は私を軽く見過ぎでは?」
アルヴィン様は笑いながら、イル様にそう言った。
待ってください。今ばかりは、イル様に同意です。イル様は、アルヴィン様を軽く見てなどいません。アルヴィン様は、絶対、史上最強の女たらしだと思います。
「アルヴィン、私はお前のことを軽く見ているつもりはないんだが……」
と、イル様。
「第一に、兄上は堅すぎるのです! もう少し柔らかくなっては? 兄上も娘たちに騒がれていますし、もっと優しくなったら……」
……アルヴィン様は柔らかすぎます。寧ろ柔らかすぎて溶けているのでは? と思ったのは、私の心。
「私には婚約者がいる。娘達に騒がれなくても良い。お前も姫に惚れているというのは口ばかりで、娘の話ばかりじゃないか」
イル様の、この言葉。婚約者がいるから娘は関係ない、というならば、もう少しその婚約者に優しくしてくれても良いんじゃないだろうか。
そしてその言葉を聞いた瞬間、
「私の話とは、そのことなのです」
アルヴィン様はそう言って、国王様に向き直った。
「父上。リイナ姫は兄上の婚約者……それは分かっています。しかし、私がそのリイナ姫に惚れてしまったのも事実。……そこで、交渉があるのです」
アルヴィン様は、にやっと笑った。なんだか……とても、悪い予感。
「この城に滞在中に、リイナ姫を私に振り向かせることが出来れば……リイナ姫の婚約者を兄上から私に変更してもらえませんか?」
今回、おっそろしく短いですね。←
申し訳ありません。続きは書けているのですが……区切り(?)が良かったので。
ちなみに、今日の話は元旦には書けていました(笑)
元旦からこんなはっちゃけた話を書いていたんだな、私。