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「姫、子供ではないんですから紅茶を口いっぱい含むのはお止め下さい」


  「どうですかな、リイナ殿。この紅茶は我が国で一番の茶葉でしてな。お口に合ったかな?」


 国王様が、豪快な声で聴いてくる。


 「ええ、とってもおいしいです、国王陛下」


 にこ、と私は笑顔を浮かべた。本当は、この家族に囲まれた精神状況で、紅茶の味なんかわからないけど。


 「……ところで、姫」


 私の隣に座っていたイル様が、小さな声で言う。


 「昨日の件について尋ねたいのですが―――よろしいでしょうか?」 

 「ごほっ!」


 イル様のその言葉に、私は咳き込んだ。

 紅茶を吹き出さなかったことが唯一の救い、だろうか。


 「リイナ姫!?」


 もう片方の反対に座っているアルヴィン様が、驚いた顔で私を見る。

 イル様もアルヴィン様も、同時に白いハンカチを私に差し出す。イル様は、婚約者だから。アルヴィン様も、普段の様子からして不思議ではない。

 でも……この不思議な席順は何なんだろう。嫌がらせとしか思えない。


 「す、すいません……。あの、あ、ほら、紅茶があまりにもおいしくて、口に含みすぎてしまいまして」


 私は顔に苦笑を浮かべ、そう弁解する。その言葉に返ってきた、三種類の返答。


 「まったく、貴女は本当に可愛いお方ですね」

 「リイナ殿にそんなに気に入られるとは、茶葉を作った農民も嬉しいでしょうな」

 「姫、子供ではないんですから紅茶を口いっぱい含むのはお止め下さい」


 どれを誰が言ったかは、明白だろう。

 アルヴィン様につっこむべきか、イル様につっこむべきか。迷った末、


 「イル様、子供とはなんですか。 私はもう16歳ですし、決して子供では……っ」


 イル様に反論することにした。


 「……分かりました、言い直しましょう。子供ではなく、幼いと」

 「どちらも同じでしょう!?」


 まったく、なんなんだろうこの人は。心の中で、そう喚く。

 ただでさえ、イル様にいらいらしている時に―――、

 

 「リイナ姫、頬が赤く染まっていますよ」


 反対の隣から聞こえる、アルヴィン様の声。今はイル様でキャパオーバーなのに!

 そして―――、キャパオーバーの状態で聞こえる、国王様の声。


 「がははは、リイナ殿、勘弁してください。イルとアルヴィンは真反対でしてな。イルがリイナ殿に対して多少憎たらしい口なのも、アルヴィンが甘い台詞ばかり吐くのも、仕方ないのです」


 仕方ない、という国王様。国王様には、仕方ないかもしれません。でも、その仕方ない人と婚約者な私はどうすれば良いんですか!

 

 「まぁ、イルも多少口が過ぎると思いますがな。いや、わしは、見目麗しいリイナ殿が初体面に少しくらい遅れたところで、ご愛嬌ですがな。イルはどうも、そういう所が許せない真面目なところがあるものでな」


 そう言って、またがはははと笑う国王様。

 それの笑い声を中断したのは……高い、鈴を転がしたような声だった。


 「まぁ、リイナ様はイルお兄様との対面に遅刻したとっ!? リイナ様、貴女は愚行をいったいいくら積み重ねれば……ッ」

 「アリス、黙りなさい」


 ばん、と音を立てて立ち上がったアリス様を沈めたのは、今まで挨拶しかしなかったお妃様。


 「でも、お母様……ッ!」

 「アリス、イルのことになると興奮するのは、貴女の悪い癖でしょう? もう貴女も15、その癖を直しなさい?」

 「……はい、お母様……」

 

 さっきまで憤っていたアリス様は、今度はしゅんとする。

 娘が母に宥められるという、客観的に見ればとても良い図。でも……それを邪魔するのは、アヴィンセル王家の女性の欠点の鉄板と化しているのか……二人のファッション。

 お妃様は、同じ色のドレスを何枚も持っているのか、昨日と同じ黄色(バナナ)ピンク(ストロベリー)。アリス様は、水色にピンク。……お二人は、“無難な色合い”や、“同系色”という言葉を知らないのだろうか。

 

 「……め? リイナ姫?」


 遠くから聞こえたアルヴィン様の声に、私はふっと我に返った。

 気付くと、目の前数十センチ先にアルヴィン様の顔。びくっとして、光の速さで顔を引く。


 「あ、アルヴィン様!? ……すいません、色について……じゃない、あの、すこし考え事を……」


 私は慌てて笑みを浮かべ、紅茶を啜る。

 うん、おいしい。紅茶の味で、自分を落ち着かせ……、

 

 「そのリイナ様の思考が、私のことについてだったら嬉しいのですが」

 

 ることは、出来なかった。げほ、と紅茶を吹きそうになる。


 「がははは、アルヴィンは本当にリイナ殿に惚れているな。リイナ殿、この息子が、ここまで一人の女性に夢中になるなど初めてのことです。もっとも、この息子に猛アピールされてここまで振り向かない女性も、リイナ殿くらいですがな」


 国王様はそう言って、またがははははと笑う。

 ……私は、別にアルヴィン様に惚れられなくて結構です。というより、このアルヴィン様の変態みじた台詞で振り向く娘がこの国にそんなにいたのでしょうか。

 そんな疑問で、頭がいっぱいになった。













なんか……タイトル、どうでも良くなっちゃってますね←

いえ、これでも考えたんですよ? でも……良いのが見つからなくて。←


イルとアルヴィン、魅力的な男性になってくれるのはいつのことやら。

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