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「貴女のその輝く瞳も、私に見せてはくださいませんか?」

 「リイナ姫、あちらを見てください。やはり、今日は月が美しい」


 アルヴィン様はそう、黄色くまんまるい月を指指して言う。


 「そうですね。とても美しいです」


 私は月だけを……アルヴィン様など視界に入れず、月だけを見ながらそう頷く。

 リイナ姫……と、アルヴィン様がなぜか落胆したような声を出した。


 「もちろん月も美しいですが、貴女のその輝く瞳も、私に見せてはくださいませんか?」


 そう言って、私の顎をくいっと上げて、自分と視線を合わせるアルヴィン様。

 あまりのことに、私の口は金魚のようにぱくぱくとした。


 「どうしました? ……ああ、なるほど、理解しました」


 アルヴィン様は、そう頷く。その瞳は優しさに満ち溢れている……のだけど、私には恐怖以外の何物でもない。

 何を理解したのですか、と聞きたい私の口に人差し指を当て、アルヴィン様は首を横に振る。


 「何も仰らなくて良いですよ。私には、伝わっています」


 だからいったい何が伝わっているのですか、と尋ねる間もなく、アルヴィン様は私の肩に手を置き、向かい合う。

 そして、その整った顔がどんどん近付いて来て、私との距離は0に―――ッ、


 「―――って、アルヴィン様! い、いいい、一体、な、ななな、何を……ッ!」


 なる前に、私はアルヴィン様を勢いよく突き飛ばした。

 転ぶまではいかず、少しよろよろとした彼は、きょとんとした顔だ。


 「何をも何も……キスです。接物。純情なるリイナ姫は、ご存じではありませんか?」

 「し、知っています、キスくらい! で、でも、なぜ急に……」


 おろおろとしながら、私は言う。最初の驚きが過ぎると、恥ずかしいばかり。きっと、私の顔は真っ赤になっているだろう。


 「なぜって……。リイナ姫が、私のキスを求めたのでしょう? 口をぱくぱくさせていたではありませんか」

 「私はアルヴィン様のキスなんて求めていません!」


 アルヴィン様の答えに被せて、私は叫ぶ。

 一体、どうしたらそんな理解になるのだろう。


 「そうですか。これは、間違えてしまい申し訳ありませんでした」


 アルヴィン様は、そう頭を下げる。が、その顔は少し微笑んでいて、反省なんてしていなさそうだ。

 私は、深いため息をついた。


 「もう、私は中に戻ります。アルヴィン様は、どうぞお一人で(・・・・)、星をお楽しみください」


 私はそう言うと、つかつかと中に戻った。



                   *******



 「なんなのよ、アルヴィン様って! わ、わ、私に、き、き、きき、キスを……ッ!」


 私は、ナミを相手にそう愚痴を漏らした。

 ナミはこくこく頷きながら聞いていたが、“キス”という単語を聞いた瞬間、形相を変えた。


 「なんですってっ? き、ききき、キスですか!? 姫様に!? あの変態王……じゃない、アルヴィン様が、姫様に!?」


 ナミは目を見開いて、私にずいっと顔を近付けた。


 「え、ええ。そうよ、本当に! 星を見て台詞をいって、変で、私ぱくぱくして、変な理解して、近付いてきて、距離が0にならなくて、それで……ッ!」

 「ひ、姫様、お待ちください、あの、言ってることが支離滅裂ですっ」


 ナミが、おろおろと私を制止する。


 「あ、ご、ごめん。でも、ほら、だって、私、アルヴィン様にキスされかけて……」

 「ええ、分かります。姫様の動揺が凄く良く分かります! アルヴィン様、信じられませんわ!」

 「何が信じられないんです?」


 急に介入してきた声に、私たちは同時に振り向いた。

 そこには……、

 

 「ユアン!」


 1トーン上がったナミの声が、その人物の名を呼ぶ。


 「リイナ様、一体何があったんですか?」


 ユアンが、そう私に尋ねた。人前だから敬語を使っているけど、瞳が“幼馴染の身に何が起きたのか気になる”と語っている。でも、

 

 「ちょっと、ね。信じられないこと。アルヴィン様って知っているでしょう?」


 とりあえず、ユアンでもナミでも愚痴を聞いてほしい。

 私の質問に、ユアンは頷く。


 「ああ、この国の第二王子ですね。イル様の弟君の」

 「そうよ。その人が私に……き、き、キスしようとしたのっ!」


 私の言葉に、ユアンは……驚かなかった。というより、何の反応もしない。

 ユアンの視線は、私からナミへと移る。


 「……ユアン?」

 「ナミ」


 私を無視して、ユアンはナミに話しかける。

 人前なのに、王女の言葉を無視していいのだろうか……。


 「どうしたの、ユアン?」


 ナミは、とろけるような瞳でユアンを見る。ここに来て、ナミとユアンの仲がいつも以上にラブラブになったと思うのは、私だけだろうか。


 「君は、俺にキスを求められたら拒むかい?」


 ユアンのその質問に、ナミは真っ赤になる。

 

 「まさか……。拒むはずがないでしょう? だって……ユアンだもの」

 「ナミ……」

 「ユアン……」


 いちゃいちゃしている二人から、私は離れる。なんなんだろう、あの二人は。

 そして、近くのテーブルにあった水をごくごくっと一気に飲んだ。


 「んんー……おいしい」


 そして、もう一杯。それを飲んで、もう一杯。とりあえず、飲んで飲んで飲む。そこで、“姫様!”という声が聞こえた。 

 振り向くと、そこにはナミ。


 「あら、ナミ、どうしたの? ユアンは?」

 

 私の質問には答えず、ナミは言う。


 「姫様、それはお酒ですよ! 姫様はお酒にとても弱いのではありませんでしたか!?」














アルヴィン、変態度が増しております。

ナミとユアン、いちゃいちゃに拍車がかかっています。

イルとリイナ……全く進展無しです。なんで、20話も使って進展がないのでしょうか……。


まぁ、二人の仲はさておき←


読者様、良いクリスマスイブ&クリスマスを。


            Marry Xmas!!

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