表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/60

「貴方にイルお兄様は渡しませんわ。この女狐」


 「イル様の、妹君……」


 私は、アリス様を見つめる。

 やはり、外見は遺伝だ。イル様やアルヴィン様の美形を受け継いでいる。もちろん、女ヴァージョンで。


 「私、イル様の婚約者であるルーン王国第一王女、リイナ・リンスレットです。よろしくお願いします」


 にこっと笑って、私も挨拶を返す。

 イル様の妹君とは言えど、仲よく出来そう。彼女の笑顔を見たときそう思ったのだ。

 でも……、


 「リイナ様、一言だけ、言わせてくださいませ」


 それは、大きな間違えだって気付いた。


 「貴方にイルお兄様は渡しませんわ。この女狐」


 そんな言葉が、聞こえた。

 

 「……ん?」


 私はきょろきょろとあたりを見回す。

 誰かが、喧嘩でもしてるのだろうか。でも、そんな様子は見えない。


 「何きょろきょろしてるんですの。貴女のことですわ、この狐姫」


 でも、やっぱり声は聞こえる。

 この鈴を鳴らしたような、可愛らしい声は……。


 「あ、アリス、様?」


 私はきょとんとして尋ねる。

 アリス様は、笑顔のまま。無邪気な笑顔は、とても可愛らしい。でも、さっきのは……。


 「アリス様、一体どういう……」

 「お言葉の通りですわ、狐姫」


 私は狐姫じゃなくてリイナなんだけど……。

 私の心の声に気付くはずもなく、アリス様は言う。


 「イルお兄様は、私のものですわ。貴女との結婚なんて、私が絶対阻止します」


 そういって、びしっと私に人差し指を突きつける。

 そう言われて、思わず出た言葉。


 「どうぞ、阻止してください」


 それを聞いて、アリス様は目を丸くする。

 それはそうだ。私はイル様の婚約者なんだから。でも、阻止してほしい。


 「リイナ様? なぜ……? 貴女は、お兄様が好きじゃないんですの?」


 きょとん、とした表情で、アリス様は私に尋ねる。

 “狐姫”ではなく“リイナ様”なのは、動揺のせいだろうか。


 「はい。もちろんです。アリス様の兄君ですから、悪く言うのも失礼とは思いますが……。

 私には、あの方の魅力が分かりません。どうぞ、私たちの結婚を阻止したいのなら阻止してください。私は、心からそれを願っています!」


 私はそういって、アリス様の手をがしっと掴む。

 ここで私が頑張って、アリス様とイル様がくっつけば――――!

 そんな、期待のこもった目で私はアリス様を見つめる。

 

 「……」


 アリス様は呆気にとられた顔で私を見て――――、


 「なんですの! それは! お兄様の魅力が分からないっ!?」


 そう、悲鳴に近い声を上げた。

 アリス様の高い声は、大広間によく響く。人々の視線が一気に私たちに集まった。


 「あ、アリス様?」

 「リイナ様、貴女、お兄様の魅力が分からないと仰りましたか? よもや私の聞き間違いでは?」


 アリス様は人の視線に気づくこともなく、続ける。


 「まさか、この世にあの麗しきお兄様の魅力が分からない方がいようとは……!

 どんな方も、お兄様に心惹かれずにはいられないというのに! 世も末ですわ!」

 「あ、あの、アリス様……」

 「アルヴィン兄様のことなら分かりますわ。兄様は娘を毎日毎日変えるような軽い男ですもの。

 でも、お兄様は素晴らしい、文武両道で、今まで一度も娘に(うつつ)を抜かすような方ではないですもの!

 なのに、その魅力が分からない? リイナ様、ご冗談もほどほどになさいませ!」


 私が口をはさむのを許さず、アリス様はそれを一息で言った。

 そして、はーっと大きく息をつく。そして、私を睨んでもう一度口を開いた。しかし、


 「リイナ様、貴女が―――」

 「アリス」


 アリス様の口は、誰かの手によって塞がれた。それは、


 「イルお兄様……!」


 アリス様の頬が、一瞬で真っ赤になる。

 ふらり、と倒れかけたアリス様を、イル様は支え起こした。


 「アリス……客人の前だ。皆の視線を一気に集めていたぞ。落ち着け」


 イル様は少しため息をついてそう言う。


 「はい、申し訳ございません、お兄様……」


 素直に謝るアリス様。

 今だけは、イル様に感謝。私は、心の底からそう思った。












あああ……アリスのキャラが濃い。

ここは異世界なので、兄弟婚もありです。確か、古代エジプトとかでも兄弟婚はあったみたい……です(?)


そして、更新に約一週間かかってしまった……!

すいません。次は、もう少し早く更新できますように―――!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ