表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/60

「びっくりして固まる姿は、とても可愛くいらっしゃいましたよ」

 

 「よく来て下さった、リイナ殿!」


 大広間で、玉座に座ったレフシア国王が豪快な声で言った。

 

 「こちらこそ、お招きいただき光栄です」


 私は膝を折って、にこっと微笑む。

 国王はがはははと笑った。


 「いやいや、やはり美人と名高いリイナ王女の微笑みは、目に良いですなぁ。

 イルではなく、わしが惚れてしまう」

 「まぁ、そんな……お上手ですね」


 私はまだがははと笑っている国王に苦笑する。

 イル様のお父様だから、大理石みたいな堅物だと思っていたけど……なんだろう、この、イル様との差は。イル様よりずっとテンションが高くて、明るい人じゃない。

 一体どうしたら、この国王陛下からイル様が生まれるんだろう……。それとも、お妃さまがイル様似の方なのかしら。


 「父上……御冗談はおやめください。母上がいるのですよ」


 イル様はため息交じりにそう言った。

 国王陛下と会った途端に、イル様の顔に浮かんだ疲れの色。

 

 「知っとるわい。どうだリイナ殿、わしの妻もかなりの美人だろう」


 国王陛下がそう言うのと同時に、お妃様が大広間に入って来た。

 イル様と同じ、漆黒の髪。確かに、美人。でも……なぜ、黄色(バナナ)ピンク(ストロベリー)の色合いのドレスを来ているんだろう……。漆黒の髪に似合わない。

 残念すぎる。


 「あら、リイナ様。ルーン王国から、よく来てくれましたね」  

 「お招き頂き光栄です、お妃様」


 お妃さまは私ににっこりと微笑んで、国王の隣にくる。

 すっごく美人。美人の微笑みは、凄く綺麗。とても綺麗、なんだけど……。やっぱり、一番気になるのは……。

 黄色(バナナ)ピンク(ストリべりー)黄色(バナナ)ピンク(ストロベリー)黄色(バナナ)ピンク(ストロベリー)黄色(バナナ)ピンク(ストロベリー)黄色(バナナ)ピンク(ストロベリー)…………。


 「今宵は、歓迎の宴と致しましょう。リイナ様は、イルの婚約者ですものね。

 リイナ様、何かお好きな食べ物はありますか? 出来るだけ用意させますが」

 「バナナ&ストロ……あっ、いえ、別に何もございません。何でも好きです」


 “バナナ&ストロベリー”と言いそうになった私は、慌てて言いかえる。危ない危ない。


 「そうですか? では、こちらの侍女がお部屋まで案内致します。

 リイナ様の侍女の方……ナミさん? ナミさんにも、お部屋をご用意しています。

 ここではナミさんも大切なお客様、ごゆるりとおくつろぎください」


 お妃様がそう言うと、二人の侍女が入って来た。


 「リイナ様、ナミ様、案内致します」

 「え、あの、私は姫様のお世話を……」

 

 ナミがおろおろと私を見る。


 「いいえ。ナミさんもお客様です。この城ではどうか、おくつろぎくださいませ」


 お妃様はにこにこしてそう言っている。

 そんなにもにこにこしてると、反対に怖い。


 「ナミ、ここでは貴女もくつろぎなさい。ただ……時々、話し相手になってね」


 私のその言葉に、ナミは『はい……』と頷いた。しぶしぶに見えたけど……私は、見逃さなかった。

 侍女に『騎士のユアンと同じ部屋にしてもらえないでしょうか?』と言うのを。



           ********



 「わあ、綺麗なお部屋ですね……」


 侍女に案内された部屋は、清潔感のある上品な部屋だった。

 寝ることが好きな私にとっては、人が三人は寝れるであろう大きなベッドが嬉しい。


 「リイナ王女様は、イル様の大切な許婚ですもの。私達侍女一同、心こめてお部屋を整えさせていただきましたわ」


 にこにこと、花でも飛びそうな勢いで言う侍女。

 この人は、私とイル様の間の険悪なムードを知らないから言えるんだろう。


 「そうですか……。ありがとうございます」


 引き攣った笑みを浮かべて、私は礼を言う。


 「では、私はここで失礼させて頂きますね。何か御用の際は、なんなりと私にお申し付けください」


 侍女はそう言って、部屋を出て行った。

 なんなんだろう……この、ピンクオーラの濃さは。

 私はため息をついて、大きなベッドに寝っ転がる。その時、


 「リイナ・レンスリット様? 入っても良いですか?」


 という、男の声がした。

 イル様の声では無い。第一、イル様なら無断で入ってくるだろう。

 『貴女は王女なのにベッドにだらしなく寝転がるなんて……』とかなんとか言いながら。


 「は、はい、どうぞ」


 私は慌ててベッドから起き上がると、少し皺のついたドレスを伸ばす。

 ドアが開いて、入って来たのは……、


 「お初にお目にかかります、リイナ姫」


 金髪……というより、クリーム色? っぽい髪の毛で、黄緑の瞳の青年。

 長身なわりには華奢な体つき。でも……イル様とは違って、優男って感じだ。


 「どなた、ですか?」


 私の問いに、青年はこつこつと歩いてくる。

 そして、私の手を取ってキスしてから言った。


 「レフシア王国第二王子、アルヴィン・アヴィンセルです。以後、お見知り置きを」


 ……イル様には、弟がいたのか。

 最初の感想はそれだった。次に、変な名前だなぁと失礼なことを思う。イル様より、“王子”っぽい外見だなぁとも思う。そして――――、


 「い、今、キスしました?」


 アルヴィン様の手にある自分の手を見つめて、私は訊ねる。


 「ええ。こんなもの、挨拶でしょう?」


 アルヴィン様はにっこりと微笑んで答える。

 微笑んでいるのに……どこか、下町で娘をナンパしているような雰因気を感じる。


 「もしや、リイナ姫はあまりなれてはいませんでしたか? これは、とんだご無礼を。

 しかし……びっくりして固まる姿は、とても可愛くいらっしゃいましたよ」


 アルヴィン様はそう笑って、私の頬を撫でる。ぞわっと背筋に寒気が走った。

 ここは……この家族は、どうなってるの――――――――――――!!















新キャラ、第二王子のアルヴィン登場です。

彼は十七歳。最初は「アル」の予定だったんですが……やめました。


25000アクセス突破、ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ