「さぁ……行きましょうか、ナミ」
「ねぇナミ、あの刺客はどうなったの?」
翌日の朝、部屋でナミにあの刺客のことを聞いた。
「ちゃんと、始末致しました! きっと、あの男はもう二度と人と会えませんよ」
ナミは誇らしげにそう答える。
「へぇ……具体的に、どうしたの?」
私のその問いに、おろおろと慌てだす。
「そっ、それは……あの、ええ、まぁ……あのですね……これを教えてしまったら、姫様の純なお心が無くなってしまうと言うか、こんなことをしたなんて知られたら、ユアンと離縁することになってしまうそうというか……」
そう、もごもごと言う。
一体どんなことをしたんだろうと、冷や汗が流れる。でも、やっぱり気になる。
純な心なんて、イル様と出逢った瞬間から消えた……と思う。
「ねっ、ナミ、教えて! お願い!」
何度も頼む私に、ナミはしぶしぶといったようすで口を開く。
「では……あの男をですね、まずは大衆の面前にさらしたんです。
そして、ピ――――をピ――――しまして、そしたら男がピ――――と叫ぶものですから、ピ――――をして黙らせまして、結果的にピ――――になったんです」
こそこそっと、その内容について私に耳打ちするナミ。
「……貴女……女を……いえ、人間を捨てたのね……」
全てを聞き終わった私は、少し涙の滲む瞳でナミを見つめた。
「姫様の為です。女だということも、人間だということも、哺乳類であるということも捨ててやります」
ナミはそう言って、私に微笑む。
あんなことを喋った後でなぜ微笑むことが出来るのかが不思議だけど、このナミの言葉には感動した。
「ナミ……ッ! 貴女はやっぱり最高よ!」
「姫様ッ!」
そう言って、私達は固く抱き合う。
その時、こんこんと壁を叩く音がした。
「リイナー……ナミに手出すなよ?」
「へっ?」
声をする方を向くと、そこにはユアン。周りに誰もいないから、“リイナ”と呼んでる。
「ユアン。私は女よ? ナミに手出すわけないでしょ」
苦笑交じりで言う私を見て、
「いやー、分かんない。だってナミはめちゃくちゃ可愛いし、良い人だし、最高だし」
とユアンは言う。
まったく、惚気て……。ナミは、ユアンの言葉に頬を真っ赤に染めてるし。
「あのね……私は女! ナミも女! 私にはそっちの趣味はないの!」
「へぇ、初めて知った」
ユアンはひゅぅっと口笛を吹く。
ああもう……! ユアンは、本当に人前とそうでないときでは態度が違う。
「ユアン、それは姫様に失礼すぎでしょ!」
ナミがそう言って、ユアンの頭を叩く。
ぱこん、などという可愛いものじゃない。あえて効果音をつけるなら……バガァン?
「って、ちょ、ナミ、痛……」
「姫様に失礼なこと言うからよ。ほら、謝んなさい。謝んないと……」
ナミはそう言って、何かをユアンの耳に囁く。
ユアンの顔が真っ青になった。そして、
「ごめん! いえ、すいません、ごめんなさい!」
と、土下座までして私に謝る。
本当に、この夫婦の関係ってなんなんだろう。
********
今日は、初日と同じ馬で行くことになっていた。
正直、一安心。イル様といっしょに狭い空間にいるのは嫌だけど。
だから、
「ここからは、もう近いらしいです。3時間ほどで王城につくそうですよ」
というナミの言葉は嬉しい。
そしてその通りに、すぐに王都が見えてきた。
灰色の壁に囲まれた、城郭都市だ。
「ここが、王都……」
窓の外を見つめて、私は呟く。
やっと、到着した。これで……やっと、やっと……この、いらいらする、不快な、イル様との旅が終わるっ!!
「姫様!? なぜ泣いておられるんですか!?」
ナミが驚いて私を見る。ふと気付くと私は涙をぼろぼろと流していた。
だって、嬉しいんだもの。イル様との旅から解放されるということが。
「だって……何度このたびの途中にイル様に殺意が沸きあがって、それを何度抑えたことか……!
それからやっと解放されるのよ? もう嬉しくて嬉しくて……」
「姫様、そんなにも……ッ!」
ナミも貰い泣きをし始めた。
二人して泣く私達。そんな私達を見てイル様は苦笑……していない。さっさと先を歩いている。
本当に、薄情な婚約者だ。
「さぁ……行きましょうか、ナミ」
「はい、姫様」
私は深く息を吐いて王城を見つめると、足を踏み出した。
これから会うのは、イル様の血縁だ。一体、どんな敵が待っているのだろうか――――――。
今回、あんまりお話が進んでないですね……。
でも、次話は新キャラ登場!! です。十中八九。
そして、300pt突破!!
ありがとうございますっ!! 300pt……初めて、3の後に0が二つ……ッ!(感涙)
……ナミが刺客に何をしたかは、トップシークレットでおねがいします。
彼女の名誉にかかわりますので。←
そして、今日は予約投稿です。
さて、今の時間(昼の十二時)、私はベッドから出ているのでしょうか。←