表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/60

「私がどんなに貴女を嫌おうと、貴女が婚約者であるという事実は、変わらないのですから」


 あの後も馬で進んだ私は、幸い落馬せずに済んだ。

 今夜の宿である、レフシア国の貴族の館についた途端に安堵のため息を漏らしたのは、私とナミしか知らないけど。


 「姫様、とうとう明日は王城へのご到着ですね」


 部屋に入ると、ナミが言った。私はため息をつきながら頷く。


 「あのイル様のお父様とお母様……どんな人なのかしら、気が重いわ」


 ため息をついて言う私に、ナミはこくこくと頷く。

 

 「ええ、一体どうしたらあんな無礼な王子様が生まれ……失礼しました」


 思わず本音を言いそうになったナミは、慌てて口を閉じる。どんなに不快感を抱いていても、国王に対してこんなことを言ったら大変だ。

 でも、私もナミに同意せずにはいられない。


 「そうよね、まったく。本当にどんな育て方をしたのかしら……」


 私はそう呟いて、ベッドに突っ伏した。

 イル様が見たら眉をひそめるだろうけど、構わない。今はいないし。


 「姫様、イル様との旅は、さぞ疲れたでしょう……」

 「そうね……。何か、飲み物を持って来てくれる?」 

 「はい」


 ナミは頷いて、部屋から出て行った。

 

 「はぁ……どんな人なんだろう」

 

 ごろんと寝転がり、天井を見つめる。

 イル様のお父様とお母様までイル様みたいだったら……だめ、今度は殴るんじゃなくて蹴りをいれてしまうかもしれない。


 「もう、だめ、お母様にも言われたじゃない、リイナ」


 そう自分自身に言い聞かせていると、パリン! と窓の割れる音がした。


 「……へ?」


 子供がボールで遊んでいて、窓に当てでもしたのかしら。

 そう思った私は、窓の方を見て目を丸くした。


 「……誰?」


 入って来たのは、大柄な男。

 思わず誰? なんて聞いたけど、これは私でも分かる。賊か、刺客。全身黒い服で、顔まで黒い布で隠している。


 「あんた、ルーン王国のリイナ・レンスリットだな? レンスリット王家の第一王女、そしてこの国の第一王子であるイル・アヴィンセルの婚約者」

 「え、はい……」


 男の問いに、思わず私は答える。


 「そうか……あんたがリイナ王女か……」


 男はそう呟くと、すらっとした大きな刀を構えた。


 「な……」


 私は慌てて、近くにある護身用の小刀を手に取った。

 これで敵うか分からないけど、とりあえず構えて男を睨む。


 「はっ、それで対抗する気かよ、温室育ちの王女サマが」


 男はふっと鼻で笑う。

 こんな状況にも関わらず、むかっとした。


 「は、鼻で笑わないで! 失礼よ、貴方! 私、これでもユアンから護身については一通りならってるんだから! 痛い目を見たくなかったら、すぐにその刀を下ろしてさっさと私の前から消えなさい!」

 「ああ? 俺は刺客、殺しのプロだ。少し習っただけの王女様になんか、負けるはずねぇだろ。

 いいか、俺らはな、お前に……ルーン王国とレフシア王国に強い繋がりが出来たら困るんだ。だから、婚約者……最大の掛け橋であるお前には、死んでもらわなにゃんねぇんだよ、王女サマ!」


 そう言って、男がにやぁっと笑う。

 でも、そんな理由で殺されるなんて気に食わない。だって、私はイル様のことが嫌いなのに結婚するのよ?

 

 「あのねぇ、人の勝手な理由で殺さないでくれる?」

 

 私は声にいらだちを滲ませながら、男に言う。


 「良い? 私は、イル様と結婚なんか、絶対にしたくないのよ! 貴方は私とイル様の結婚に反対しているようだから言うけどね、私はイル様が大っ嫌いなの!

 あんな最低な男、今まで一度も見たことがないわ! いちいち勘に触ることは言うし、結婚なんて願い下げ。

 結婚せずにいられるならそうしたいわ!」


 言っているうちにどんどんヒートアップしてきて、言い終わったときには私はぜいぜいと荒い息をしていた。

 男は、ぽかんとしている。


 「そんなにイル王子を嫌う奴、初めて見たぜ……」


 呆然と呟く男。ええ、そうでしょうね。イル様は、傍から見たらただのかっこいい王子様だもの。


 「あんた……大変なんだな」


 男の目が、哀れな者をみる目になってるのは気のせいかしら。

 刺客に同情される王女()ってどうなのかしらと思いながら、私は頷く。


 「でしょう? だから、婚約なんて破棄出来るならとっくにしてるわ!」

 「そうか……でも、あんたが嫌いだろうと結婚することに変わりはねぇだろ? ってことで、死んでくれや」


 男はそう言うと、だっと私に向かってきた。

 ちょっと待ってよ! 私の魂の叫びはどうなったの!? 嫌いな人との婚約が原因で死ぬって、そんなの嫌よ!?


 「っ!」


 小刀で、刃を受け止める。が、小刀はすぐに弾き飛ばされた。


 「ほーら、あんたの考えは甘いだろ? 王女サマ」


 男はにやぁっと笑って、刀を大きく振り上げる。

 終わりだ……そう思って、目をつむる。攻撃は―――来ない。……って、え?

 まさか、ここでイル様が来て剣で刀を受け止めてくれている、なんてベタな展開が……


 「あ、イル様……」


 あった。

 目の前には、剣で男の刀を受け止めているイル様の姿。


 「なぜ……え?」


 ぽかんとしている私を見て、イル様が言う。


 「なぜも何もないでしょう。私が貴女を助けるのは、当然です。私がどんなに貴女を嫌おうと、貴女が婚約者であるという事実は、変わらないのですから」














テスト後初更新!!

タイトルが、長い……←


そして、ものすごーくベタな展開ですが……二人はこれくらいのことでくっつかないので、ご安心ください。←



そして! 月潟隼様より、リイナのイラストを頂きました!


 http://4233.mitemin.net/i33654/


 感激です!! 活動報告では10月に書いていたのですが、こちらを更新していなかったので、ご紹介が遅れて申し訳ありません(> <)


 私より遥かに上手いです!

 一目見ることをおすすめしますっ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ