あみんぼ
掲載日:2026/07/18
母は編み棒を探していた。
娘の編みかけのセーターと一緒にどこへやったのやら、とあちこち探していると。
そこへ人語を話す様になってきた娘がトコトコとやってきて
「あみんぼ、てーびのうやにあゆ」
とつたない言葉で言った。
母が娘の言葉を翻訳するに、それは
「編み棒、テレビの裏にある」
という事らしかった。
「テレビの裏?」
「うん。てーびのうや」
娘は無邪気に笑ってこっくりした。
結局編み棒は違う場所で見つかった。
しかし母には心あたりがあった。
以前、編み棒がテレビの裏で見つかった事があった。
母はそれを取ろうとした。
しかしその時は娘がお腹の中で八ヶ月目になっていて、大きなお腹で無理な格好をしたものだからお腹が痛みだし、あわてて病院に行った。
医者に随分叱られた。
しかしこの子はその時、お腹の中にいたわけで……
「何でそんな事言ったの?」
「知らん。自分の事でしょうが」
かつては小さかった娘である私に、母は言った。
しかし、当の私はそんな事はまるで覚えていない。




