この上の世も雨が降る。2コマ目
今回は異世界に来ただけです。回想が大きいですね。この短さで投稿してたら何コマ目まで行くんだか…。
目が覚めた。うん、やっぱり目は覚めることになるんだけどさ…。ここってどこだろう。頬がしっとりしていて、持ち上げた私の手に生えている指の先で触れると、深い紺色をしていた。
「なにこれっ。ここどこー。」
横になっている私の首に触れた。起き上がるとこの地面は芝生だ。空は晴れているし、パーカーも乾いている。私はいつからここにいたのだろう。見渡すと、私の知らない景色で、浅い波のある芝生があって…。いや、簡単に言えばなにもないの方が速いが、立ち上がりここを動こうか迷う。
でも、ここは陽の光が私がいた夏よりやさしい。さっきまでびしょぬれだったし、もう少しここにいてもいいよね…。
朝早くの布団の中みたいなやる気だ。多分ここ現実じゃないでしょ。まあ、おばあちゃん家に帰っても、ずっと床に転がってる性分だから変わんないか。
目を閉じて、日が肌に当たるのを静かに感じていると、おばあちゃん家のわけもない安心感が思い出される。ここは一体どこなんだろう。
その家には、私が子供の頃から猫が一匹住み着いている。小学校の頃から夏休み、冬休み、春休みと訪れる。田舎だし家も庭も広いものだから、近くから動物が来たって不思議ではない。飼っているわけではないから家に入れたことはないのだが、訪れると決まって挨拶して撫でてあげるんだ。
ごめんその後ちゃんと手は洗うんだけど。
「しーちゃん、あけましておめでとー。」
「おめでとうございます。」
「まあ、ちゃんと言えて偉いね。」
「ねえ、お正月のごはんは?」
「ああ、おせちね。しーちゃん栗きんとん大好きだもんね。用意してあるからたべなさい。」
お正月の朝は、さむくて寝るへやからリビングまで渡るろうかは、足がつまさきから凍ってしまいそうだ。先に起きたおばあちゃんがストーブで暖めたへやに駆け込む。
私はまっさきに栗きんとんをつまみながら、席について窓の外を見ると一匹の白い猫が寝転がっている。今思えば、野良猫のわりにきれいなものなのだが、私は興味深く母に聞いた。
「ねえ、あの猫ってどこから来たのかな?」
「あら確かに、見たことない。おばあちゃん、また飼うことにしたのかしら。ねえかあさん、あの猫ってうちの?」
「えぇ?知らないわよ。うちに入れたことだってないわ。こんな日に外じゃ寒いだろうにねぇ。」
「へー。」
そのときの私は小学校二年生で、甘い栗きんとんと伊達巻が好きだったので1日中おせちをつまみ食いしていた。家の中が暖かいから目の前の猫も暖かいのではないかという感覚になるが、実際はそんなことない。彼はほとんど一日中そこにいた。私は偉そうに、つまんでいた栗きんとんからとって”くりちゃん”と名付けた。白い猫なんだけど。
そんな心地よさのある芝生の上だった。
「ああ、現実世界の私って今道の上で寝てるのかな。びしょびしょになったら風邪引いちゃうし…。いや、今ここにいる私が私?」
ということで、今ちょっと歩き回ってるんだけど、やっぱりたまに頬から紺色の絵の具みたいのが垂れるんだよね。なんか、手が汚れちゃったのはもうあんま気にしてないんだけど。買い物カバンもどっかいっちゃったし、どうしようかな。
頭の上には雲がほとんどなくて、ずっと遠くから囲むように白く分厚い雲が浮いてる。
「え?」
丘を下っていったところで足元に濃く白い煙のようなのが広がっていた。それが池のようになっていて、その奥にもまた小高い丘がある。
「これ、渡って良いのかな。」
おそるおそる足を近づけてみる。まじまじとそれを見れば見るほど、中で細かく起きている波みたいなのがやさしく揺れながら進んでいく。ちょっと緊張するけど…。
「だめ!」
「はいやめます!…って、どなた?」
ちょっと体が傾きながらも後ろを振り向いた。そこには少し青みがかった黒髪の男の人がいて、ちょっと深刻そうな顔をしてこちらを見ていた。
「それは、君が触ると君もその雲になってしまう。危ないから近づかないで。」
「なっちゃったら?」
「君の体はどこにもなかったことになって、君はばらばらに分解されて土になる。」
外国風の、ローブっていうのかな、あの魔法使いの衣装みたいのを着ている。
「君はどこから来たんだい?見たことない服だよ。」
「私は…えっと、ちょっとその、何だっけ。ここよりは都会かもだけど、ちょっと田舎の、えっととにかく日本です。日本から来ました。」
彼は少し戸惑った。私もこんなところで何をしてるのか怪しい人としか思われないと不安だったが彼はこう言った。
「そうなんですね。その国では、そのような服を着るのですね。今日は涼しいですけど大丈夫ですか?」
え?私は、ここは日に当たっていて温かいと思っていたが、あの時の夏とは違う涼しさに足から少し冷えが身体に回ったのに気づく。
「え、さむ!なんか曇ってきた?」
「ああ、これからまたどっと降ろうとしてる。僕が住んでる屋根にいたほうが良いから、来て。」
「あ、ありがとう。」
時間帯的にか雲なのかわからないが、辺りがさっきより薄暗くなってきた。私は彼の左後ろ、ちょっと離れた彼の足元に視線を下ろしながら歩き出した。
さっきまでより冷たい風が吹き始め、その足元も暗雲のうすい陰に塗り替えられていくと私もこころなしか不安が芽生えた。
つづく。
どうでしたか?
物足りないですね!一体君(私(作者))は何がしたいんだって。でもまだ設定も展開も持ち合わせてるので続きも読んでほしいです。まあ出たらね。




