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この上の世も雨が降る。1コマ目

 一つのボツもなしに考えた二作目です。やっぱり最初のうちは文章の読みやすさの成長みたいのがちょっとある気がします。気のせいにしときます。

 最初の詩みたいのも書き終わってから描いてないから、最後にはどうなるか分からないし。嘘ついたら予想外の展開ってことでみたいなのりで書いてるもので…。

 今年の夏も、とにかく暑いもんで…またあのぐるぐるするやつ、あの…風の、台風だ、台風が世間を騒がせる季節ですね。それで今年はでかい。見たことないんだよって、みんな口を揃えて言うんだが雨も風も強いってね。

 ときに、人が自然を汚せば壊れていくと、そう言うが自然の方がまだいくつか居座る次元が違うのかな。あくまで私たちはそのうちの小さな括りの中、見上げる力の前、見えているものが全てじゃなくて、これみんなを覆う大きなそれが見守っている…。その境界は曖昧で、ふっと飛んで行けるかもしれないよ。


   *  *  *


 「なんかさぁ、嫌になっちゃうよねこんな暑くてじめじめしてて…。」

 独り言に相手はいない。小田舎のスーパーは、台風が近づくとかで、風が強い中なのに人が多かった。私もその一人ではあるのだが、なんというか皆さん落ち着きがないようで。

 「うわっ!あっ…。」

 ”がらっごろんごろん…。”え?なにあの人もうちょっと周り見なよ。

 「何よ、うるさいわね。こんなときにお店散らかさないでよ。」

 「…そんな私ここ歩いてただけだし、その、あなたがぶつかったように見えたし…一緒に片付けましょうか。」

 「なあに?ぶつかってきたのはそっちじゃない。」

 多分理不尽なおばさんの怒号が降り注ぐが、怒られている感覚は私の胸を踏みつける。外では、店内まで響くほどに雨が強くなっていて、辺りの人たちに不安や焦りを募らせていく。まだ夜ではないが、大雨に塗りつぶされた真っ暗な外の様子を見るほどに、店内の明るさが不気味にさえ思える。遠目に外を見ると大きな窓には私の姿が映る。淡い青紫色のパーカーは買い物中に少し乾いてきたみたいだ。積み上げられたティッシュの箱が崩れたのは、絶対あのひとのせいなのに…。

 また気分が少し害された気がした。私は一人、箱を積んで食品のコーナーへ歩いた。

 ちなみに今は、祖父母の家に家族で帰ってきたところなんだけど、台風のことで買いだめを頼まれたのだ。若者ながらに他の人がイライラしている中、ちょっと気分はふわっとする。閉じ込められるような湿気も、なんだか優しく包むように感じられる。


 レジで会計を済ませて、早くうちに帰ろう。トトっと足早に短い列を探すと、並んだ私の前はさっきのおばさんだった。私には気づいていなかったが、さっきのことなど覚えていない感じでイライラは伝わってきた。

 自動ドアが開くと、夏の熱気が湿気とともにぶわっと吹き付ける…雨も細かく。

 傘を指して、気の滅入る帰路につこうとすると雨は、来たときよりずっと強かった。落ちてくる数多の水滴は、私の周りをことごとく目隠しをするようで、前がよく見えない。

 ふーっふーと重い買い物カバンに息の調子を引っ張られながらも、歩みを進めていくと、車道の車も他の家の明かりは全くもって私との関係を断ち切ろうとするような素っ気なさに見えて寂しい…。


 「あ、うぅんん。風?濡れちゃうし…。!?」

 私のぼさっと湿気った髪の毛が一気に持ち上がった。この風は、真下から来るのだ。かかとが浮き上がって、私は歩調を早くした。もうパーカーは胸から下がぼつぼつと雨が当たっていて、色が鈍くなっている。

 ”来る...何かが...。”そう思った時、私の後ろで大きな水しぶきの音がした。振り返ると学校のプールをそのままひっくり返したような水の山が一気に落ちて、波がこちらに迫って来る。私は荷物で走れないのだから、本当にやめてほしいのに…。次の瞬間には、私の靴を全部浸す水がこちらに流れてきた。

 風が強くなって、傘が飛んで行くと思った時。私の傘は真上に向けてひっくり返ろうとし、その力は私をブレずまっすぐに持ち上げようとする。

 なにこれ、暗くて周りが見えにくいから…ちょっとどうなってるか確かめさせ…。

 視界をもとに下ろして、周りを確認したが辺りは、落ちる水滴がなんだか時間が止まったようにまっすぐ下に伸びて、世界は縦にしましまのフィルターがかかったように見えた。

 分からない。知らない。助かりたい。

 私も心も無言だったけど、頭にはよぎった。よく見るとフィルターの奥の景色は、ゆっくりと下に落ちていく。まっすぐ、止まった光が引っ張って伸ばされるように。


 私は風を受けても、身体が動かず、登っていたのだった。無意識に目を閉じると、音も間延びしてあの雨は柔らかくなっていく。しばらく、何も思うことはなくなってしまった。


 目が覚めた。うん、やっぱり目は覚めることになるんだけどさ…。ここってどこだろう。頬がしっとりしていて、持ち上げた私の手に生えている指の先で触れると、深い紺色をしていた。


書き終わってから投稿してないので、細々と送れます。

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