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かれこれ1時間ほど山を歩き、いつのまにか太陽が沈み始めていた。辺りを見渡しながら見つけたのは木造で作られた小さな小屋だった。屋根の一部は崩れていたけれど、風は何とか防げそうだ。


「ここならしっかり休めるな。」


「ここにしようか!」


人がいるようには見えない山。

この小屋を所有している人は分からないけど、今日だけは許してほしい。とりあえず、リツにはしっかり休んでほしいから。


「麗。少しここで待っていろ。」


「え、ちょっと!リツ、どこに行くの!?」


「すぐ戻る。」


そう言って狐の姿で小屋から出て行ってしまったリツ。


(休まないとダメなのに…)


だけど、あれだけ走れるんだ。

まだ体力は残っているみたい。


リツがどこかへ行っている間、私は小屋を綺麗にしようと思った。あまりにもホコリがすごく、このままでは身体に良くない。それに、これほど汚れていると言うことはこの小屋に人が全く来ていないということ。置かれた椅子にもホコリが被っていて誰かが座った痕跡もない。間違いなく誰も来ていない証拠。


(とりあえず、ホコリは落としておこう…)


私は偶然持ってきていたハンカチを取り出し、はたくようにホコリを落としていく。ハンカチは汚れたが、座れるようにはなったから満足だ。


満足したと同時にリツが帰ってきたんだけど…


「リツ…それ…猪…だよね?」


「ああ、そうだ。」


私の目の前で猪を地面に下ろす。

動かない様子を見れば亡くなっているのだろう。


「それ、どうしたの…」


「狩った。」


「なんで!?」


「こいつ、生意気にも俺に飛びかかって来やがったんだ。だから、やり返したまでだ。」


人間で言えば正当防衛のようなものか…


「リツ…。」


「…なんだ…」


「無事で良かった。」


「…怒らないのか…?」


「理由が理由だからね…でも、死ぬまでやるのはダメ。絶対に。分かった?」


「…うん。」


リツはどうやら私が怒ると思ったらしい。

確かに、リツから手を出していたなら怒っていた。

だけど、この猪が最初にリツを襲ったんだ。

正当防衛ってところかな?

でも、亡くなるまでやったのは良くなかった。

この猪にも家族はいる。

家族にとっては大事な一つの命なんだから。

それに…残されたこの猪の家族は私たちのように孤独になってしまうよ。


「…腹が減った。」


「ふふっ。猪を持ち帰ってきたのは、夕食にするためだったんだね。」


「…悪いか。」


「ちゃんと祈ってから食事にしましょう。」


リツは申し訳なさそうにしながら人間の姿に戻り私と共に祈りを捧げた。リツが器用に串を作り、猪を捌けばそれを串に刺していく。串に刺して火で焼かれた猪は二人で隣に並んで食べた。


──ボンッ


食べ終われば、リツはいつもの音を立てながら狐の姿になる。私の膝の上に頭を乗せるとこちらを見つめる。


「どうしたの?」


「…撫でてくれ。」


「甘えてくれてるの?」


「違う。落ち着くだけだ。早くしろ。」


「分かったよ。」


膝の上に乗せられたリツの頭を優しく撫でる。

もふもふとしたリツの毛並みが気持ちいい。

目を閉じているリツは優しい顔をしている…


「ねえ、リツ。」


「なんだ?」


「第二の層、水龍の層の話を聞かせて?」


「水龍の層はその名の通り水を使うモンスターがうじゃうじゃといる層だ。」


「狐火が使えないのはモンスターが水を使うからだね?」


「ああ、だが安心しろ。ちゃんと策はある。」


「さっきもそう言っていたけど、その策って何?」


「…策というより、俺の技と言った方がいいのかもな。」


「だから、それが何なのかを知りたいんだけど…」


「着いてからのお楽しみだ。」


言うつもりはないみたい。

まあ、リツがそう言うなら楽しみにしておくことにしよう。


(あれ…寝てる…?)


頭を撫でていると静かに寝息を立てているリツ。

疲れたのだろう。今日はずっと動いてばかりだったから。


「おやすみ…リツ。」


私はリツのおでこに口づけをして眠りについた。

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